この記事は先週7月12日に掲載したシムノンを読む 第20回「あれ!」他 初期コント・ユーモア小説(前篇)のつづきです。(編集部) |
Georges Sim, Une vraie surprise, «Paris-Plaisirs» 1930/12(n° 102)p.234[原題:本当の驚き]《パリ歓楽》* ジヨルジユ・シム「コントÇA 吃驚會(シュプリーパルチー)!」飯田三太郎訳、《猟奇》1931/6(4巻4号)pp.38-39(目次欄はジョルジュ・シム「吃驚會」表記)【写真1】 Georges Sim, Ça, «Paris-Plaisirs» 1931/2(n° 104)p.26[原題:あれ]* ジヨルヂユ・シム「CA あれ!」丸尾長顯訳、《猟奇》1931/5(4巻3号)pp.76-77(目次欄はジョルジユ・シム「ça(さ!)」表記)* |
シムノンは1923年3月にレジーヌ・ランションと結婚し、彼女をパリに連れてきた。その年の夏から彼はド・トラシー侯爵の秘書として雇われ、ロアール川沿いのシャトーへよく出向くことになる。侯爵の暮らしていたパライユ=ル=フレジルが『サン・フィアクル殺人事件』(1932)の舞台のモデルとなったという研究家たちの推測は、本連載ですでに紹介した。
こうした状況の変化のなかでもシムノンは精力的に書き続けた。シムノンの初期ペンネーム作品をカラー書影つきで紹介したミシェル・ルモアヌ氏の書誌『Lumières sur le Simenon de l’aube (1920-1931)』[シムノン黎明期の輝き(1920-1931)](2012)に拠ると、シムノンは1932年までに上述したような娯楽・風俗雑誌へ1150編以上もの作品を寄せたという。そのうち250編ほどが書籍のかたちにまとめられた。
マンギー氏の書誌『ジョルジュ・シムからシムノンへ』358ページに、その9冊のリストがある。1925年から1927年にかけて出版されたもので、出版社は1冊を除いてすべて Prima社(例外の1冊も、後に Prima社で再刊したようだ)。プリック・エ・プロック Plick et Plock、ゴム・ギュ Gom Gut、リュック・ドルソン Luc Dorsan、ジョルジュ・シム Georges Simといった名前で出ている。
このうちゴム・ギュ名義の『Au grand 13』[大いなる13](1925)はよく売れたらしく海外古書サイトで見かける。黒表紙と白表紙の2ヴァージョンがあり、ロベール・デュミエール氏の書誌『Simenon en volumes』[シムノン大全](2003)の情報とつき合わせると、私が所持している本は1925年内に3刷まで出たうちの2刷(黒)と3刷(白)らしい。
私がいまのところ所持しているのは3冊4種。【写真7】いずれも目次(収録順までわかるリスト)を含む書誌は流通していないので、紙幅を取るが思い切ってここに載せてみる。
Gom Gut, Au grand 13, Illustration de la couverture par Luc Lafnet, Illustration du texite par Ludo Chauviac, Prima, 1925[大いなる13]コント集
▼収録作
- Au grand 13/Denise et ses soeurs/M. Tiburce marchand d’amour/Nids et temples d’amour(各章副題:I Chambre à trois francs/II La Chambre à vingt francs…et le champagne…/III La Chambre du copain/IV …à la Lanterne/V Massages à l’entresol/VI Relations mondaines/VII Boudoirs et placards/VIII Boîtes de nuit)/l’Oreille à la porte(同名その1)/le Cousin Eusèbe/Fraîcheur/Mariage d’inclination/les Bonnes amies/le Blé qui lève/le Beau jeune homme blond/Grand nettoyage/la Dame masquée/Chastes étreintes/Une simpe erreur/Une petite femme délicate/l’Amour au balcon/Un cercle bougrement vicieux/l’Ile des singes/Doux souvenirs/Une maître-chanteuse/les Jolies nièces/Rebecca, femme entretenue/Une bonne place/la Cure/Une petite main qui se…cramponne/Allo!…Élyseé 69-96?…/les Clients du petit bar(各章副題:I Bigoudis/II Julie/III Irma)/la Treizième chemise/Nids de passereaux…Nids d’amour…(各編副題:Nids de Pierrots/Nids de Pinsons/Nids de Roiteles/Nids de Colibris)/Chemise d’occasion/le Gigolo/l’Oreille à la porte(同名その2)/les Amants candides/l’Oreille à la porte(同名その3)/Frénésie/la Négresse/l’Amour en wagon-lit/Un raid raide/Un sensible/l’Oreille à la porte(同名その4)/Pinalcion amoureux/Un véritable amour/Histoire immorale/Une histoire banale/l’Oreille à la porte(同名その5)/Une haure avec…Irma!/Une haure avec…Olga!/Une heure avec…la grande Julie/Une heure avec…Anna, danseuse russe/Une haure avec…Minnie/Une haure avec…la femme à Julot/Une heure avec…Mme Machin, des galeries/Une haure avec…Zézette/Une heure avec…la femme de chose/Une haure avec…Lili, des Folies/Une haure avec…Alice, sous-maîtresse/Une haure avec…Mistress Machinson’s/Bobette et le photographe/Hilaron s’émancipe/l’Oreille à la porte(同名その6)/Accommodements/Une grue/la Môme à Jules/Histoire de polis/la Petit chasseur en rouge et le vieux monsieur en noir/Choses qui volent/Un honnête homme/Cadeaux/le Carquois épuisé/Rancoeur/Une vilaine affaire
Georges Sim, Paris leste, Illustrations de Louis Bonnotte, Paris-Plaisirs, 出版年未記載(1927)[際どいパリ]コント集
▼収録作
- Madelleine-Bastille en douze arrest galants(各章副題:Rue Cambon!/II Opéra/III Café Américain/IV Rue Laffitte/V Rue Drouot/VI Passage Jouffroy!/VII Faubourg Montmartre! /VIII Porte Saint-Denis!/IX Boulevard de Strasbourg!/X Boulevard Saint-Martin/XI République!/XII Bastille!)/Concorde Dauphine en six hôtels plus ou moins particuliers(各章副題:I Pond-Point des Champs-Élysées/II. – Rue du Colisée/III. – Au “Black’ Ridge”/IV. – Rue de Berry?/V. – Avenue du Bois/VI. – l’Hotel de la Belle Étoile)/Montparnasse en six séances de pose(各章副題:I Paulette/II Constance/III Miss Sweet/IV Riri/V Yoka/IV Antonello)/Montmartre en six noces! (各章副題:I. – La noce française/II. – La noce américaine/III. – La noce russe/IV. – La noce brésilienne/V. – La noce scandinave/VI. – La noce nègre)/Cuisse nues Jambes en l’air(各章副題:I. – Nini l’oseille/II. – Laurette/III. – Liliane/IV. – Jeanne de Cinq-à-Sept/V. – Les “Picratt’s Girls”/VI. Élénore)/Fleurs et fruits de bourgeoisie(各章副題:I. – Yvette… ou le mimosa/II. – Hélène… ou le chrysanthème/III. – Madame chose… ou la mirabelle!/IV. – Jeannine… ou le muscat/V. – Hortense… ou le dahlia/VI. – Éliane… ou les chardons/VII. – Aline… ou la prunelle/VIII. – Enfin… la poire, Mesdames!)/Bals Musette(全6章)
Georges Sim, Un monsieur libidineaux, Couverture illustrée par Paul Dufau, Prima, 1927[好色氏]中編小説1編・コント2編
▼収録作
- Un monsieur libidineaux/Trois personnages et l’amour/Une vraie jeune fille
1925年のコント集『大いなる13』表題作のコント「Au grand 13」[大いなる13]は書き下ろしで、やはり私の語学力ではオチがよくわからないが、表紙に描かれている赤いランタンはパリ10区と18区を隔てるラ・シャペル大通りの夜の灯を示しているようだ(13はたぶん番地名)。この大通りに繋がるバルベス通りには、かつてデュファイエルという超巨大デパートもあった。表紙のイラストはやや退廃的に見えるが、本文中のイラストは別の人が担当していて、もっとかわいらしい。
1927年のコント集『Paris leste』は《パリ歓楽》掲載の連作をまとめたもの。題名のlesteは「敏捷な」「機敏な」の他に「みだらな」「際どい」の意味がある。むかし『SUDDEN FICTION』(文春文庫)という超短編小説集があり、帯に「あっ!という間の小説集」とあったのがとても印象的だった。この「あっ!という間の小説」に「みだらな」の意味が加わったタイトルだと思う。うまい訳語はないかと頭をひねったが思いつかない。つかの間の明るい艶笑コント集という感じがほしい。
1927年の『好色氏』は「すけべおじさん」のような感じのタイトルだと思う。表題作の中編は書き下ろし。やや長めのコント2編を併載。いつか読んでみたい!
他に掲載紙誌を入手できた作品を紹介しておこう。書誌は文末にまとめて記した。読み間違いもあるだろうがご容赦を。このうち《パリ歓楽》掲載作は電子図書館ガリカで原文が読めるので、フランス語が読める方はぜひそちらもご参照いただきたい。
(「“知ってるつもり”」「バカンスの宿題」「ジャン」「匿名の手紙」はオチがよくわからなかったので今回あらすじをパスしたが、フランス語が読める方はとくに「ジャン」にご注目いただきたい。ジャン・コクトーにまつわる話なのである)
「エイプリル・フール」微笑》1924/4/3
フランス語でエイプリル・フールを表す言葉「四月の魚」poisson d’avril に引っかけた話。ジョゼフ・ムイユ氏はショーウィンドウに目を留め、妻にキャンディでも買って帰ろうかと思い立つ。そこへ店の女が出てきていう。「チョコレートですか? 魚はどうです、いいのがありますよ!」「魚だって?」「ええ、今日は4月1日、エイプリル・フールです」なるほどとムイユ氏は思い、チョコレートをまぶした魚を紙にくるんでもらった。よし、いたずらで妻を問い詰めてみよう、彼女が怒った後でこの包みを見せて、今日がエイプリル・フールだというんだ。帰宅したムイユ氏が演技すると、驚いたことに若妻イルマは「私が悪いわけじゃないの、ジャックが……」と告白し始めた。あなたが仕事で忙しかった晩、まさにいまあなたが座っているソファでジャックと……などといい出す。「なんだって、ぼくの親友ジャックとできていたのか、なんてことだ……」しかしそこで妻は今日が4月1日だと気づいて口調を変えた。「ばかね、キスして……」それでようやく気を取り直したムイユ氏だったが、妻がソファに好色な視線を向けるのを見て、ついまばたきをしたのである。
「13枚のシュミーズ」《笑い》1924/10/25
ラバーブ氏は娼婦をつかまえてホテルに入ったが、この女は妙なところがある。スーツケースを持ち歩いている娼婦なんているだろうか? いまラバーブ氏はオリンポスの神さながら、股間に葉っぱもつけず、浴室へ消えた娼婦を裸で待っている。ようやく出てきた彼女はシュミーズとパンタロン姿だった。「待った?」「とんでもない! とてもかわいいよ……」「このシュミーズどう? 本物のシルクなの
「すてきだ、きみのヒップライン……さあ、ここへ来て……」「このシュミーズ、100フランの価値はあるわ! パンタロンもいっしょに買ったのよ、安上がりだから。あなたの奥さんはシュミーズにもっとお金を使っているでしょうけどね。奥さんにこんなのをあげたらいいわ。30フラン」「おいおい!」「あと12枚持ってるの。スーツケースのなかに入ってるわ」ラバーブ氏は待ちきれず彼女の衣服をはぎ取ろうとするが、「あっ、これはだめよ! これは見本で、40フランよ……」
「コカイン中毒のポンム氏」《笑い》1925/3/7
「ああ、なんてこった、ドクター、早く!」医者が駆けつけるとポンム氏はいった。「妻が5グラムのコカインを飲み込んじまったんです! 意識はありますか? ああ、ぼくは妻を殺してしまった。かわいそうなメラニー……」医者は《マグネシウム》と書かれた箱を見やっていった[胃潰瘍の薬、酸化マグネシウムのことか]。「落ち着きなさい。奥さんはこの箱のものを口にしただけですよ。ところでそこに炭酸ソーダ水がありますね……」ポンム氏の顔が蒼くなった。[本当はポンム氏がコカイン常習者だったと医師が見抜いたというオチ]
「“知ってるつもり”」《フルフル》1925/4/22
パス。
「よき息子」《フルフル》1925/4/22
イジドール・パットは16歳になってもまだ子供はキャベツから生まれると信じている。親として諭すべきだ! 父のパット氏はラルース医学辞典を持ち出してイジドールに男性の人体構造を説明した。一時間後、息子は「それで、それをやるのは楽しいですか?」と訊く。「楽しい? そうとも! まあ悪くない、母さんが玉葱漬けをつくるようなものさ……」「女の人に求めることができますか?」「イエスでありノーだな。特定の人なら」「つまり男にとっては一生の仕事だと?」「まあ一生だ! 若いころは一発で……」「何を一発?」「いずれわかるよ!」学習を終えたイジドールは「父さん! 20フランください。2倍働きますから……」と頼んだ。ここからが物語の第二章。パット夫妻は一生懸命に仕事をした。「あなた、もう歳なんだから休んだら?」そのときイジドールが父に千フランを手渡した。「父さんの20フランの価値です! しかも毎週!」息子は説明した。「ぼくは若くて……それで一発できたわけです。母さんの友達のドゥユ夫人が毎週くれるんです」「まだまだあの老婦人はくれるわよ!」と母はいった……。
「モンパルナス ポーズ六態」(後編)《パリ歓楽》1926/5
4人目・リリ:ここはモンパルナスのカフェ・レストラン《ラ・ロトンドLa Rotonde》。リリはいつもここにいる。モンパルナスの典型だ。シカゴかホノルルからパリへやってきた。最初は他の女と同じだったが、いまはもう彼女じゃない……彼女はすばらしいモデルだった。何人もの画家のモデルになった。立体派だったり、点描派だったり……彼女はそうした絵に感心して、そのすべてに似たいと思った。彼女は現代美術の完璧な要約となった。今日もまたリリは部屋へ連れて行かれ、モデルとなって、何十枚の絵となって世に広まってゆく……。
5人目・ヨカ:ギリシアの古代都市タナダラの高貴な血を引いているというヨカは、モデルをするときいつも画家にふっかける。「100フランくれたらポーズをとるわ」「触らないで! もっと私をほしい? 200フランくれたら……」支払う画家もいるが、渋る画家もいる。「なら150フランは? 100は?」値段は20まで下がる。そんなとき、ヨカはもう高貴な女ではなく、ハイチの娘で中国人とホッテントットの混血だ……。
6人目・アントネロ:18歳のイタリア青年アントネロは、「シーザーのオージー」なる注文を受けた画家に雇われて、大勢の裸の女や同じ衣装を身につけた男たちとともにモデルになっている。画家がアントネロに注文する。「恥ずかしがるな! ポーズを取るだけじゃないか。早く、そこの女をぐっとつかめ!」「マダム、すみません……」恐縮しながらもうれしさを感じつつ、女に近づくアントネロ。やがて女が悲鳴を上げた。画家が怒鳴る。「おい、アントネロ、ポーズを保てといっただろう!」「ぼく……ぼく……これ以上できません!」「何をしにやってきたんだ!」彼はさくらんぼのように真っ赤になっていった。「誓います……ぼくは動いていません! ねえ、マダム?」
http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k9671130/f4.item
http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k9671130/f5.item
「決定的な理由」《パリ歓楽》1926/5
豪商のハリファックス氏にアプローチしようと、アメリカ人のガストン氏はキャバレーで声をかけた。ハリファックス氏はしこたま飲んでいるが、ガストン氏はまだほろ酔いだ。「あなたはブロンド娘がお好きでしょう。あそこで代議士と踊っている娘はどうです?」「ノー!」「あの日本人の娘は……」「ノー!」「あの娘ならどうです?」とガストン氏はスリムでエレガントな女を指す。「パリいちばんの身体ですよ。さあ、決めましょう、イエスですね?」「ノー! マスター、もっと酒だ!」「どうして信じてくれないんです。見ても触れても抱いてもいないのにわかるはずがないでしょう?」ガストン氏は最後のウィスキーグラスを煽り、「見て、触れて、抱いて……」そして彼女がハリファックス氏の唇にキスするのを見て肩をすくめ、メランコリックな気分になってつぶやいた。「ぼくの女なのに!……イエス!」
http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k9671130/f14.item
「バカンスの宿題」《微笑》1926/7/22
パス。
「ジャン」《パリ歓楽》1930/12
パス。
http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k967144d/f8.item
「匿名の手紙」 《ハリウッドのファースト・ナショナル・スタジオにおけるパリ演芸》発行年月無記載 1930頃か 《パリ歓楽》1930/5掲載作と同一作品
パス。
http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k9671376/f8.item
いかがだろう。たわいもないといえばそうなのだが、意外と面白いと感じられたのではないだろうか。いつかフランス語が読めるようになったら趣味と語学の勉強を兼ねて自分で訳して、『シムノン初期コント精選集』を個人的につくるのも楽しいかもしれないとさえ思わせる。
先日、英ITVが製作したローワン・アトキンソン主演の新作メグレTVドラマ『メグレ罠を張る』(2016)を視聴した。私は原作を未読なのだが、この物語では最後に犯人を特定する際、一種の頓知のような展開がある。メグレものは心理小説・雰囲気小説であるとよくいわれるが、いままで第一期の作品を読む限り、意外とメグレが奇抜な捜査法を採るストーリーが多くて驚かされる。シムノンのこうした作風は、ひょっとするとごく初期のころに大量のコントを書いたから形成されたのではないか、と思っている。一種唐突に思えるようなオチをつけたり、頓知のような解決策を見せたりするのは、コントの手法ではないだろうか。
シムノンの初期コント・ユーモア作品はこれまでほとんど日本に紹介されてこなかったが、実際に読んでみるとこのように大きな発見がある。やはり作家としての源流がここにあるのだと実感させてくれる。
1924年3月にシャトー管理の仕事は終わり、シムノンはパリへ戻ってさらに執筆に励む。このころからシムノンはコントだけでなく、より一般的な中編小説も書き始めた。ほとんどは小冊子として販売された恋愛小説で、コーランクール通り89番地のカフェ《ル・レーヴLe Rêve》(現在名は《オ・レーヴAu Rêve》)で書かれたという。最初の作品は『Le roman d’une dactylo』[あるタイピストの物語](1924/6)、筆名はジャン・デュ・ペリーJean du Perryであった。次回は初期恋愛小説編である。
2016年6月現在、瀬名が入手したシムノンの初期コント掲載紙誌一覧
- Kim, Poisson d’avril, «Le Sourire» 1924/4/3(n° 361)p.10[エイプリル・フール]《微笑》 *マンギー氏の書誌『ジョルジュ・シムからシムノンへ』に詳細未掲載 →Gom Gut, Perversités frivoles, Prima, 1925[軽薄なひねくれ者]コント集
- Gom Gut, La treizième chemise, «Le Rire» 1924/10/25(n° 299)p.16[13枚のシュミーズ]《笑い》 →Gom Gut, Au grand 13, Prima, 1925[大いなる13]コント集
- Gom Gut, Monsieur Pomme, cocaïnomane, «Le Rire» 1925/3/7(n° 318)p.14[コカイン中毒のポンム氏](同タイトルによる競作のひとつ)《笑い》
- Gom Gut, «Savoir-y-faire», «Froufrou» 1925/4/22(n° 125)p.1 [?知ってるつもり?]《フルフル》
- Gom Gut, Un bon fils, «Froufrou» 1925/4/22(n° 125)p.2 [よき息子]《フルフル》
- Georges Sim, Monparnasse en six séances de pose(後編), «Paris-Plaisirs» 1926/5(n° 47)pp.82-83[モンパルナス ポーズ六態]《パリ歓楽》 →Georges Sim, Paris leste, Paris-Plaisirs, 1927-[際どいパリ]コント集
- Luc Dorsan, La raison péremptoire, «Paris-Plaisirs» 1926/5(n° 47)p.93[決定的な理由]《パリ歓楽》
- Georges Sim, Devoirs de vacances, «La Sourire» 1926/7/22(n° 481)p.18[バカンスの宿題]《微笑》
- Georges Sim, Jean, «Paris-Plaisirs» 1930/12(n° 102)p.226[ジャン]《パリ歓楽》
- Gom-Gut, Lettre anonyme, «Paris Attractions dans le Studio de First National à Hollywood» 発行年月無記載 1930頃か(n° 9)p.2[匿名の手紙]《ハリウッドのファースト・ナショナル・スタジオにおけるパリ演芸》 «Paris-Plaisirs» 1930/5(n° 95)p.86掲載作と同一作品 *『ジョルジュ・シムからシムノンへ』に詳細未掲載
【追記】
今回の前篇掲載後、改めて三人社の《猟奇》総目次を眺めていたところ、さらにシムノンの邦訳があることに気づいた! おお、大発見だ。
- 1931/9(4巻6号)
- 小説 怪しの古塔“リユック・ドルサン[著] 丸尾長顕[訳]”
- 1931/12(4巻7号)
- 小説 樽詰にされた男“(フランス)ゴム・ギユー[著] 丸尾長顕[訳]”
やはり同じ雑誌のバックナンバーを探すと出てくるものだ。怪奇探偵小説風の邦題で、すぐには出典の見当がつかない。詳細を調べて本連載で紹介したい。
【ジョルジュ・シムノン情報】
▼作家の中島京子氏が、翻訳家であった父・中島昭和氏とその訳書『黄色い犬』について、雑誌《ふらんす》2016年6月号にエッセイ「フランスと私 黄色い犬と断崖」を寄稿している。ここで中島氏が言及しているのは角川文庫版『黄色い犬』。私が所持している1966年11月30日発行の4版訳者紹介欄にビュトール『断崖』の記載はなく、1976年4月20日発行の11版にはある。当時角川文庫の著者・訳者紹介欄は、時代とともにどんどん内容が変更されてゆくことで知られていた。このエッセイで中島氏は、父が訳したビュトールの訳題は『断崖』ではなく本当は『段階』だが、現在の電子書籍版には後年の訳者紹介欄が使用されており、このように間違った題名が流布してしまったと示している。
▼2016年6月11-19日、フランス西部のレ・サーブル=ドロンヌで「Festival Simenon 2016」[シムノン祭2016]が開催された。今回で17回目とのこと。トークイベントや古い映画の上映、舞台劇『猫』の上演などがあったようだ。
http://www.festival-simenon-sablesolonne.com
▼《フィガロ・ジャポン》ウェブ版に掲載された、メグレと料理に関する記事。Mariko Omura「今週のPARIS 近頃ちょっとご無沙汰では? たまにはクラシックなビストロ料理を。」
2016.6.15 http://column.madamefigaro.jp/paris/weekly-paris/post-1706.html
▼本年3月に放映されたローワン・アトキンソン主演の新作メグレTVドラマ『メグレ罠を張る』が好成績だったことを受けて、さらに2作品の追加制作が決まった。原作となるのは『メグレと深夜の十字路』『モンマルトルのメグレ』。なお、すでに第2作の『メグレと殺人者たち』は撮影が終了し、本年の終わりころに放映の予定となっている。さあ日本の出版社の皆さん、そろそろ本腰を入れてメグレものを全冊新訳刊行していい時期じゃありませんか!
▼こちらはローワン・アトキンソン『メグレ罠を張る』の、オーストラリアBBC first版(6月12日放映)予告編。英ITV版の予告とはまた少し違う雰囲気が楽しめる。
瀬名 秀明(せな ひであき) |
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1968年静岡県生まれ。1995年に『パラサイト・イヴ』で日本ホラー小説大賞受賞。著書に『小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団(原作=藤子・F・不二雄)』『新生』等多数。 雑誌「小説推理」2016年6月号(4月下旬発売)から、新作長篇『この青い空で君をつつもう』の短期集中連載が始まりました。商業誌に小説をまともに掲載していただくのは実に2年8ヵ月ぶり。故郷の静岡を舞台とした青春小説です。連載は8月号(6月下旬発売)までの全3回。どうぞご支援よろしくお願いいたします。 |
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