全国の腐女子の皆様とそうでない皆様、こんにちは!
TVシリーズ『パーソン・オブ・インタレスト』が終わってしまって寂しい方も多いのでは。あのシリーズ、フィンチ(計画)&リース(実戦)のコンビだけで充分萌えられたのに、シーズン2の第1話で、ギャングが番犬として飼っていた凶暴なデカい犬(ベルジアン・マリノア種)をリースが瞬時に手なずけ、“犬にも好かれるナイスガイ”っぷりを見せた上、連れて帰って相棒フィンチに有無を言わせず「2人で」飼うことにして、犬好き腐女子を心肺停止させたものでした(しかも後半はウルトラ美老人悪役まで投入されてサービス良すぎなんですけど!)。
というわけで今回は、全国の犬好き&これで犬好きになった方々の間で大好評を博したロバート・クレイス『容疑者』の続編、『約束』(高橋恭美子訳/創元推理文庫)をご紹介いたします!(訳者の高橋さんもお書きになっているように、原題そのままとはいえこのタイトルのそっけなさはある意味貴重)
前作『容疑者』は、ともに心に傷を負ったコンビ――ロス市警の巡査スコットと、かつてアフガニスタンの戦場で軍用犬として働いていたジャーマン・シェパードのマギー――が、いかにしてお互いをいたわり、信頼し、新しい人生を築き上げたかという、それはそれは心温まる物語でした。
……てことは今回は犬萌えなのか、と思ったそこのあなた! 違いますよ! マギーは女の子ですから! もうねー、「お嬢さん、肉でもいかがですか?」とかナンパしたくなるくらい可愛いんです(デレデレ)。そうです、本書の腐要素は、スピンオフの『天使の護衛』から6年目、本シリーズの『サンセット大通りの疑惑』からはなんと17年目にしてやっと日本に再登場した、エルヴィス・コール、ジョー・パイク&ジョン・ストーンの豪華オールスターメンズ3人組でございます!
ロスアンジェルスの住宅街で、逃亡中の殺人犯を追っていたスコットとマギーは、あたり一面を吹き飛ばせるほどの大量の爆発物を偶然発見します。同じ頃、その近所で行方不明の女性を探していた私立探偵のコールは、依頼内容を明かせないことから、殺人事件の容疑者として目をつけられてしまいます。しかしスコットとマギーは、ほんの一瞬ですが、真犯人を目撃していたのです。一方、依頼人に不審な点を感じたコールは、身の潔白を証明するとともに、依頼の裏に隠された陰謀を暴くべく、相棒のパイク(またの名を秘密兵器)と、高報酬傭兵のストーンの手を借り、本格的な調査に乗り出します。
警察と容疑者という関係ながらも、捜査の過程でだんだんと心を通わせるスコット&マギーとコールたち。マギーを見たストーンが、「いいねえ、犬か」と目じりを下げたり、ぶっきらぼうなパイクがすすんで挨拶のしぐさをしたり、マギーの方もコールたちになついていくくだりは、殺伐とした事件が続く中、読んでいてほっとします。
スコットとマギーの仲の良さは相変わらずですが、本書ではマギーがやきもちを焼くような人物も。相棒の警察犬を守るため自らロットワイラーに立ち向かって指を食いちぎられた過去がある、警察犬隊のレジェンド、リーランド部長刑事も再登場しますが、彼の過去の逸話がもう涙なくしては読めないという…。
そして本書を彩るヤロー3人組を簡単にご紹介しますと――
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こんな人たちが犬を囲んでいちゃいちゃ、もとい、和気あいあいしたりカーチェイスしたりドンパチしたりしてるわけですよ! それだけでも今すぐ読みたくなったでしょ!? しかも充実の萌え要素! たとえば張り込みに行くのに、残りものを使ってコールがお弁当を作ったり、それをストーンが美味しそうに食べたりとか萌えどころ満載なのですが、なかでも自宅の豪邸で、ポルシェ並みのお値段の豪華ベッドでギャル2人と眠っていたストーンが、人の気配で起きるシーン。「ジョン、俺だ」って、それパイクなんですけどね。いくら急用とはいえ、音も立てずに他人の寝室に忍び込むなよ! しかも相手は女子含めて全員素っ裸。ストーンは多少驚いてましたが、パイク、もう少し気をつかってもいいんじゃないかと思うんですけど(笑)。それでもなおマッパで歩き回るストーン、お前はフォーグラーか!(注:ハラルト・ギルバース『ゲルマニア』参照のこと)
そんなありがたいエピソードを挟みつつ、テンポよく読者をひっぱっていく本書、じゃあキャラだけで読ませる作品かと思われるかもしれませんが、そんなことはありません! コールたちが掴む事実は次第に様相を変えていき、クライマックスでは凶悪事件に隠された意外な真相が浮かび上がります。アメリカはもちろん、これからの時代、このようなやるせない事件はどこででも起きるのではないでしょうか。著者の良心が感じられるラストの後日談も深い印象を残します。西海岸の青い空の下、正義感に燃える30代イケメン3人の活躍をどうぞご堪能下さい。
さて、犬好きでキアヌ萌えの方々を筆頭に大絶賛されたアクション映画『ジョン・ウィック』の続編、『ジョン・ウィック:チャプター2』が7/7(金)に遂に公開となります! 飼い犬の復讐のため、たった一人でロシアン・マフィアの大組織を壊滅させた伝説の殺し屋ジョン・ウィック。本作は前作のラストから5日後に幕を開けます。
亡くなった妻が残した愛犬を殺され、その次に大事な愛車を取り返しに行くジョン(キアヌ・リーヴス)。愛車は取り戻したものの、悲劇から完全に立ち直れないジョンのもとに、かつての知り合いである殺し屋サンティーノ(リカルド・スカマルチョ)が訪ねてきます。彼の依頼を断り、殺し屋界の掟に背いたジョンを待っていたのは、殺し屋VS殺し屋軍団の壮絶バトル大会だったのです!
以前クリス・ホルム『殺し屋を殺せ』の時にも引き合いに出しましたが、主役も殺し屋なら敵も殺し屋という、殺し屋純度100%のこのシリーズ、殺し屋御用達ホテルや殺し屋界の非情の掟など魅力的な設定がぎっしりと詰まっていましたが、本作ではさらに、武器ソムリエや殺しのイチ推しコーデ、闇の地下組織なども登場し、まさに究極の殺し屋ファンタジーに仕上がっています。アクションシーンはもちろん言うまでもなく、スタント出身の監督が放つ神業カーチェイスのオープニングシーンから、観客は一瞬も目が離せません!
流れるような動きとともに繰り出される、手際のいい必殺技の数々。前作を上回る、めくるめくボディカウントの嵐にうっとり! しかも本作ではNYホテルオーナーのウィンストン(イアン・マクシェーン)に加え、ローマ本店オーナーとしてあのフランコ・ネロが出演し、ダブル美老人という超素敵なオマケ付き! 「犬に危害を加えようとする奴は許せない!」スタンスはもちろん変わりません。そんな『ジョン・ウィック:チャプター2』と、ロバート・クレイス『約束』、そして突然ですがボストン・テラン『その犬の歩むところ』(田口俊樹訳/文春文庫)という、犬好きに大推薦の三作品、ぜひお楽しみ下さいませ!
●映画『ジョン・ウィック:チャプター2』予告篇
■タイトル:『ジョン・ウィック:チャプター2』
■原題:John Wick : Chapter 2
■監督:チャド・スタエルスキ『ジョン・ウィック』
■出演:キアヌ・リーブス、コモン、ローレンス・フィッシュバーン
■公開表記:7月7日(金)TOHOシネマズ みゆき座ほか全国公開
■配給:ポニーキャニオン
■2017年/アメリカ
■コピーライト:©2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
♪akira |
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BBC版シャーロックではレストレードのファン。『柳下毅一郎の皆殺し映画通信』でスットコ映画レビューを書かせてもらってます。トヨザキ社長の書評王ブログ『書評王の島』にて「愛としみのスットコ映画」を超不定期に連載中。 |