投票者コメントのご紹介・前篇につづいて、第十回翻訳ミステリー大賞の本投票に添えられた翻訳者のみなさまのコメントの一部をご紹介します。

 前篇同様、掲載にあたって編集した箇所がありますこと、ご了承ください。作品は得票数順、コメントは投票メール到着順です。

 受賞作と最終候補作がとりあげられた「書評七福神今月の一冊」の該当月のリンクも添えました。えりすぐりの5作品を読み巧者の七福神はどんなふうに読んだのか。ぜひリンク先もお読みください。

(ただいま接戦中! 公開開票式では開票に応じてエドガー・アラン・ポーの顔を点数表に貼っていきます)

 

候補作『そしてミランダを殺す』ピーター・スワンソン/務台夏子(東京創元社)

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鶸田裕子:なるほどこう来たか。視点が変わり、世界がぐるっと回転するような感じが快感。ひねった終わりかたも良い。

安達真弓:タイトルの「そして」が、物語をワンランク面白くするスパイスとして機能しています。もうそれだけでわたしの1位。いえ、本編も極上です。

井野上悦子:斬新で魅力的な悪女。リリーがサイコパスだけれど、絶対悪でないのが、いいですね。このあと、どうなるのかと想像したくなります。

『そしてミランダを殺す』2018-03-15 書評七福神の二月度ベスト発表!

 

候補作『用心棒』デイヴィッド・ゴードン/青木千鶴(早川書房)

20130416191138.jpg(10票)

白石朗:アップルストアでiPhoneのバッテリー交換をしたおり、この本のお
かげで待ち時間がとても短く感じられたばかりか、あと少し待たせてくれたら読みおわるのに……とさえ思いました。次にバッテリー交換に行くときには続篇が出ているとうれしい。

加賀山卓朗:この人の最大の美点は「サービス精神」だと思う。今回も終盤の追跡シーンなど、愉しい趣向が盛りだくさんでした。次作もかならず読みます。

上條ひろみ:絶妙な抜け感がたまらない痛快娯楽クライムノヴェル。凄腕なのにゆるふわ……かつてこんな用心棒がいたでしょうか? 胸キュンポイントの地雷原でした。

坂本あおい:いろんな種類の悪者がウジャウジャひしめいているところが、愉快でしょうがない。楽しい読書時間をすごせました。

吉野山早苗:毎年のことながら、今年も迷いに迷いました。
戦争でトラウマを抱えているわりには、ジョーがが明るいキャラなので、安心して読めました。そして、彼は主人公なのに、主人公のくせに「ワン・オブ・ゼム」にしか思えないくらい、ほかの登場人物がわいわい賑やかで、読んでいて楽しかったです。あと、解説にもありましたが、287ページのジャンプは、ほんとうにいいですね。

鈴木恵:たしかに「カササギ」は面白い。五つもの賞を総なめにしたというのもうなずけます。でも、面白い本は「カササギ」だけじゃないんだよ。そんな気持ちをこめて。

高橋恭美子:『IQ』も捨てがたいのですが、舞台設定からストーリー、登場人物に至るまでみんな好みで、いちばん楽しく気持ちよく読めた『用心棒』に一票を。文武両道でしかも男前の用心棒ジョーLOVE♡です。シンプルなタイトルとモノトーンの渋いカバーデザインもかっこいい。こういう軽快なハードボイルドをもっと!

『用心棒』2018-11-08 書評七福神の十月度ベスト発表!

 

候補作『IQ』ジョー・イデ/熊谷千寿(早川書房)

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栗木さつき:自分が置かれた状況のなかで、下を向かず、頭脳をフル回転させて世間を渡っていく主人公が頼もしい。日系アメリカ人の著者によるクールなブラック・シャーロックの誕生に快哉した。周囲の友人やラッパーたちも善人ではないけれど、どこか憎めなくて愉快。成功して大金を稼いだラッパーにはなかなかヒット作が続かない理由にも納得しました(笑)。次作も期待しています!

山口かおり:スラム育ちだが高度な知性と見識、銃器やメカの扱いにも長け、街の面倒ごとを解決している。そんなIQと比べて、ふと思い出したのは探偵スペンサー。かつては大酒飲み、ヘビースモーカー、不健康が定番だった探偵小説の世界が、彼の登場で一変したっけ。IQの登場はそのくらい鮮烈だ。終盤話がゴタゴタしたのと、兄の死の真相が?なのが難だが、魅力的なキャラ満載で始まった新シリーズの今後に期待!

鈴木美朋:読んでいて抜群に楽しかったので。この著者の可能性に期待します。

芹澤恵:クールなニュー・ヒーローの登場に拍手喝采。cliff-hanging な終わり方で続きが猛烈に気になります。

宮﨑真紀:どれも甲乙つけがたい、いい作品ばかりでしたが、ブラックカルチャーをそのまま写し取ったかのような翻訳の冴えにうなった本作品に投票いたします。今年は事前に読んでいた作品がわりに多かったので、すべて全部読みきることができ、投票できてよかったです!

『IQ』2018-07-12 書評七福神の六月度ベスト発表!

 

(大賞トロフィー/写真:© 永友ヒロミ&矢野広美)

 

【本投票者・全56名、五十音順、敬称略】

《ア行》青木悦子、安達眞弓、石飛千尋、伊藤直子、稲垣みどり、岩瀬徳子、稲村文吾、井野上悦子、越前敏弥、大野晶子、大原葵

《カ行》加賀山卓朗、加藤かおり、鎌田三平、上條ひろみ、唐木田みゆき、川添節子、喜須海理子、北綾子、北田絵里子、北村みちよ、国弘喜美代、熊井ひろ美、栗木さつき、栗原百代、児島修、小林さゆり

《サ行》坂田雪子、坂本あおい、白石朗、鈴木美朋、鈴木恵、芹澤恵

《タ行》高野優、高橋佳奈子、高橋恭美子、高橋知子、高山真由美、田口俊樹、竹若理衣、辻早苗

《ナ行》野口百合子

《ハ行》服部京子、東野さやか、日暮美月、菱山美穂、鶸田裕子、舩山むつみ、堀川志野舞

《マ行》三角和代、満園真木、宮﨑真紀、武藤陽生、森嶋マリ

《ヤ行》山口かおり、吉野山早苗

 

●第一回大賞受賞作

●第二回大賞受賞作

●第三回大賞受賞作

●第四回大賞受賞作

●第五回大賞受賞作

●第六回大賞受賞作

●第七回大賞受賞作

第八回大賞受賞作

第九回大賞受賞作

 

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