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(承前)

 読書会終了後は、全員参加で、二本松駅前にある「杉乃家」というお店へ移動。浪江焼そばを食べました。震災後に、浪江町から二本松市へ避難なさったご夫婦が経営するお店です。

 田口さんの音頭で乾杯をし歓談するなかで、第二回開催を提案させていただいたところ、全員一致でご賛成いただきました。

 思えば今回の読書会は、企画当初の12月中旬から開催当日の2月26日まで、驚きと喜びの連続だったように思います。「読書会を開催しませんか」という呼び掛けに、軽い気持ちで立候補のメールを送ったところ、「そのお申し出を待っていました、愛読者からの初めての立候補です、全力でサポートします」という熱い返事がすぐに届き、『天使と悪魔』の結末のように驚きました。

 田口さん、那波さんから参加のご連絡をいただいた時には『アクロイド殺し』級の衝撃を受けました。

 読書会の告知用にブログを開設、ツイッターもはじめたところ、全国の翻訳ミステリーファンの方から暖かいお言葉、応援、激励が山のように届きました。大阪読書会の幹事様からは、クリスティー関連の貴重な資料もご提供いただきました。感謝に堪えません。

 翻訳ミステリーを「買って、読む」ことが、最大の応援だと思うようになってからずいぶんたちますが、読書会幹事を経験してみて「もうひとつの応援方法」があることに気がつきました。

 たとえ大ぜいじゃなくても、参加していただける方がいるかぎり、福島大会を継続していきたいですね。

 福島読書会は、とりあえず、「黄金時代の古典的本格ミステリー押しで、第二回課題図書は『オランダ靴の謎』エラリー・クイーン」です。次回開催地は二本松市、初夏の予定。今回の経験を生かして、さらに楽しい会にしようと思います。

「ABCからはじめてXYZまで」。第一回で「ABC」は済んでいますし、次回の『オランダ』『エラリー』で「D」「E」もクリア。次の「F」はまだ秘密です。

 福島読書会は『カーテン』があいたばかり。これからもよろしくお願い致します。

 ご参加いただいたみなさまへ御礼を。

 お世話になったすべてのみなさまへ感謝を。

 ありがとうございました。

福島読書会 IN 二本松 世話人 杉澤秀明

杉澤さんによる福島読書会のブログはこちら

◎たくさんの笑いと熱い思いと浪江焼きそばと

 幹事の杉澤秀明さんの気合いの入った素晴らしいレポートのあとに、なにを付け加えることがありましょう。あの会のなごやかさ、本格ミステリーへの熱い思い、会場に響いた笑いが一読でよみがえってきました。もうこれ以上必要ないという気もしますが、一参加者として、少しだけ書かせていただきます。

 クリスティの『ABC殺人事件』は、さすが「読ませる傑作」だけあって、本筋とは関係のない細かなエピソードまで話題に載せて楽しめました。1冊の本について語っているうちに、図書館勤めで子供たちを本好きにするために奮闘中とか、中学生ではじめた読書ノートがいまでは数十冊とか、妻はわたしの読む本はほとんど読んでくれる(のろけ?)とか、参加者それぞれの「本と人生」が垣間見えてきて、それもよかったです。

 そうそう、田口さんの『ABC殺人事件』に関するおもしろ話(爆弾発言?)は二本松市に向かう電車内ですでに炸裂……しそうでしたが、「まだ早い〜!」と封印し、会場まで鮮度を保ってお届けできたのは、わたしなりのこの会への貢献であったと自負しておりますよ。田口さんはいつもどおり気さくで軽いノリの表向きながら、胸のうちにはけっこうな気合いをもって会にのぞまれていたと拝察します。気どりのない「ぶっちゃけ話」で終始笑いをとりつつ、訳者としての長い経験に裏打ちされた貴重な話を惜しみなく披露してくださいました。ミステリーが人生にあたえてくれる喜びについて、翻訳という仕事のおもしろさについて、あらためて気づかせてもらえる会になりました。

 会場となった「屋内の大地」は、西日本や日本海側の各地から土や小枝や落ち葉を集めて子供たちのためにつくられた本当に小さな室内公園でした。そのあとに訪れた二本松駅前、浪江焼きそばの「杉乃家」は、浪江町から二本松市に避難されたご夫婦が営まれているお店です。馬をあしらった素朴で力強い大堀相馬焼のお皿は、地震にも割れず残ったものを一時帰宅のときに元のお店から持ち出されたのだとうかがいました。ご夫婦の笑顔に送り出されて、楽しい会の余韻に浸りつつも「福島のいま」も忘れてはならないと心に刻んだ帰り路でした。

 杉澤さんはじめ読書会の立ち上げに尽力されたみなさん、ありがとうございました。つぎの開催は初夏なんですね。全国のみなさん、ぜひ二本松市に乗りこんで、本格ミステリーについて語り合い、あのおいしい浪江焼きそばを味わってください。ついでに近くの岳温泉で一泊なんてのもいいなあ……。この福島読書会が本好きを結びつけるひとつの場として息長くつづきますように、わたしもせいいっぱいエールを送りつづけます。

(那波かおり)

◎事務局より

 これまで東京以外での読書会は、各都市在住の翻訳者や書評家の方々のご尽力の賜物でした。

 一方、今回のこの二本松での会は、初めて一般読者の方が声をあげてくださり、実現したものです。

 事務局としては、待ってましたとばかり、またいくらかは景気づけになればと思い、参加させてもらいました。

 参加者の数こそ少なかったですが、主催者の杉澤さんのお人柄の出た和やかで愉しい会でした。でも、なんか私ひとり、しゃべってましたかねえ。ちょい反省です。

 那波さんもお忙しい中、また遠いところ、お出ましくださり、ほんとうにありがとうございました。

 こうした会が全国に広がること、事務局一同、心から願っております。

(田口俊樹)