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 第八回翻訳ミステリー大賞の本投票には、多くの翻訳者のみなさまから投票をいただきました。投票総数は59名。ここであらためて、そのおひとりおひとりに御礼を申し上げます。

 4月23日掲載の【速報】第八回翻訳ミステリー大賞決定!に引き続き、本日は投票に添えられた「熱いおすすめコメント」の一部を二回にわけてご紹介します。

 なお掲載にあたって編集した箇所がありますこと、ご了承ください。

 作品は得票数順、コメントは投票者名50音順です。

 コメントなしで投票した方がいらっしゃいますので、コメント数と得票数はかならずしも一致しません。

 また、受賞作と最終候補作がとりあげられた「書評七福神今月の一冊」の該当月のリンクも添えました。えりすぐりの5作品を七福神はどんなふうに読んだのか。ぜひリンク先もお読みください。

20140923091320.png受賞作『その雪と血を』ジョー・ネスボ/鈴木恵(早川書房)

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(写真左:事務局代表の田口俊樹より訳者の鈴木恵さんへの賞状贈呈。写真右:早川書房の担当編集者・根本氏と鈴木氏)

受賞のことば

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 どうもありがとうございました。こういうこともあろうかと思いまして(といいなが胸ポケットからメモを出す——場内爆笑)。この作品に、そしてこの翻訳ミステリー大賞に投票してくださったみなさまにお礼を申し上げます。いま思えば非常に短い本書ならではの“小粒感”がよかったのかなと思いますが、なんと本書には続篇があります(場内どよめく)。時代もおなじ、脇役たちもおおむねおなじですが、続篇『ミッドナイト・サン』(仮題)の主人公はドラッグディーラー「漁師」子飼いの腑甲斐ない殺し屋で、この男がノルウェーの北のはずれの、トナカイの遊牧で生計を立てている人々の集落に逃げこむところからはじまります。『その雪と血を』同様非常に短く、さらにコミカルな雰囲気の『ミッドナイト・サン』は、なんとなんと、来年2018年前半にお届けできる予定。みなさん、よろしくお願いいたします。

青木創:ラストシーンの美しさは随一だと思います。

安達眞弓:今年は本当に迷いました。長年安定した作品を世に送り出している、ジョー・ネスボを大賞に推します。

上條ひろみ:パルプ・ノワールのバカ悲しさと、愚直な愛、死と暴力、あふれる詩心、そして物語の力。すべてがつまっていながらこのコンパクトさ。ひとりでも多くの人に読んでほしいと思います。

北田絵里子:クリスマス・ストーリーの新定番として読み継がれていきますように!

栗木さつき:初めて読んだとき、はらはらと落涙し、再読してまた落涙しました。往年のセピア色のハリウッド映画を観ているような気持ちでページを繰りましたが、最後の凄惨かつ幻想的なシーンの美しさに息を呑みました。叙情と無情、悲哀とユーモア、豪胆と繊細。これだけの短い作品のなかに入れ子のような構造があるうえ、登場人物たちの造形も見事でした。翻訳の文章も美しいこの北欧の現代版寓話に、熱い一票を投じます。

黒木章人:ノワールなクリスマスストーリーがこれほどまでに美しいとは……読んだのは正月。一週間早く読まなかったことを後悔。

関麻衣子:最初から最後まで、すべてがツボにはまりました。

芹澤恵:短くてキレがよくて、それでいて情感たっぷりで心揺さぶられる。魅力はいろいろあれど、個人的にいちばんを挙げるなら文章が端正で美しいこと。ちょっと切羽詰まっていた時期に拝読したのに、読みはじめたとたん、気持ちがしんとなりました。

高野優:やっぱり、ノワールはよい!

田口俊樹:のっけからぐいぐい引き込まれる、ぴんと張りつめたこのどこまでもせつない文体。もちろん原文あってのことだが、ここでは訳者の功を多としたい。よいしょ!

服部理佳:暴力と死に支配される世界であるはずなのに、切ないほど美しく情感豊か。うっかり電車の中で読み終えてしまい、涙をごまかすのに苦労しました。

堀川志野舞:美しく悲しいおとぎ話のような結末が胸に響きました。最後のページを読み終えたあと、すぐに前の章を読み返していました。活字ならではの味わい深さがある物語。短い作品ではあるけれど、ポケミスという形で刊行されたところも良かったと思います。

武藤陽生:綿のような雪が街灯の光の中を舞っていた。舞いあがるとも舞いおりるともつかずに、オスロ・フィヨルドをおおう広大な闇から吹きこんでくる身を切るような寒風に、あてどもなく身をゆだねている。……この出だしを読んだ瞬間、傑作だと予感しました。ストーリーも翻訳も印象的な一作、大賞にふさわしいと思います。何より、この短さ! 出版不況の時代にあって、短さというのはほかの何ものにも代えがたい美徳ではないでしょうか。

『その雪と血を』2016-11-17 書評七福神の十月度ベスト発表! / 2016-10-20 書評七福神の九月度ベスト発表!

 候補作『マプチェの女』カリル・フェレ/ 加藤かおり、川口明百美(早川書房)

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柿沼瑛子:自分ではどうしようもない状況を土足で打破していくヒロイン…いろいろな意味で「過剰」な作品でした。

小林さゆり:ヒロイン・ジャナの野性味あふれる魅力に圧倒されました。

坂田雪子:主人公ジャナの強さが圧巻でした。読み終わったあと、アルゼンチンの濃密な世界からしばらく帰ってこられませんでした。

白石朗:この熱量と怒り、この裂帛の気合い。読みおえたあと世界が少しちがって見えるかもしれない。

鈴木恵:怒りが行間から噴き出してくるような凄みがありました。みっちりと詰まった内容をすみずみまで読みやすい日本語にした翻訳の力も、大きいと思います。

野口百合子:頭を殴られたような衝撃を受け、歴史に対する自分の無知を思い知ると同時に、熱く力強い物語に興奮しました。

南沢篤花:最終5作品いずれも甲乙つけがたく、自分の好みに合う合わないといった点でも、今回ほど迷ったことはないが、アルゼンチンという舞台の熱・痕・エネルギー・汚濁、そういったものが胸にぐんぐん迫ってくるという点でこの作品を選んだ。

山口かおり:果たしてこれが私にとって大賞と言えるのか、と言えば違うのだが、圧倒的なスケールと迫力、初めて経験するアルゼンチンの人や風土の、広漠としながらも濃密に滾り立つような空気感など、非常に面白く読めた。次回作を楽しみに待ちたい作家が現れて嬉しい。

吉野山早苗:ひどいエピソードの連続に、最初のうちは読んでいてつらく、何度も本を閉じました。でも、悪いこともこれほど徹底的に書かれるとかえって心にぐっと迫ってきて、どこまでもエンタメに徹していると思われる著者の術中にはまった感じです。

『マプチェの女』2016-04-14 書評七福神の三月度ベスト発表! / 2016-03-17 書評七福神の二月度ベスト発表!

 次回は以下の三作へのコメントを紹介いたします。



●第一回大賞受賞作

●第二回大賞受賞作

●第三回大賞受賞作

●第四回大賞受賞作

●第五回大賞受賞作

●第六回大賞受賞作

●第七回大賞受賞作

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