『Yの悲劇』を読んでいない位なら『Xの悲劇』も『Zの悲劇』も手にとったことはないだろう。そしてまた『ABC殺人事件』も覗いたことがないだろう。つまり探偵小説のAからZまで知らないだろう。(丸谷才一著『深夜の散歩』より)

「翻訳ミステリーのABCからXYZまで」を課題書選定テーマに、2012年2月26日『ABC殺人事件』でスタートした翻訳ミステリー福島読書会も19回目。ゴールまであと3回、大団円近し。

 今回の課題書には、早川書房刊、ロス・マクドナルド Ross Macdonald 著『ウィチャリー家の女』The Wycherly Woman を選択。WがWる、アルファベットシリーズ「W」にふさわしい作品です。『Wの悲劇』は夏樹静子よりずっと前に、ロス・マクドナルドによって書かれていたのですね。

「失踪した女を追うアーチャーのこころに、重くのしかかる彼女の美しく暗い翳。家庭の悲劇を描くハードボイルド派巨匠の最高傑作!」というのが版元による内容紹介。

 文藝春秋刊『週刊文春2013年1月4日臨時増刊 東西ミステリーベスト100』掲載、法月倫太郎さんのコメント。〈もつれ合った宿命の糸が解きほぐされ、救われない魂が「くらやみとしずけさ」に吸い込まれていく。ミステリ史上屈指のラストシーン〉。

 そして、早川書房刊『ミステリマガジンNo.524 1999年11月号 特集——リュウ・アーチャー誕生50年』より、池上冬樹さんの文章もぜひ紹介させていただきたい。

「いやあ驚いた。大げさにいうなら、カルチャーショックに近かった。(中略)純文学の匂いが濃い。文学=純文学と思っていた当時の〈文学青年〉には充分に衝撃的だった。落ちついた文体、とくに小笠原豊樹の訳文に魅了され、文学観どころか翻訳観もがらりと変わった。翻訳というものは、原文をただ日本語にするだけでなく、創作や読書体験で培ってきた文章力で原文と戦い、よりよく表現するものであることがわかったのである」(引用文の完全版は福島読書会ブログにて公開中です)

 福島読書会恒例、課題書にちなんだ食べモノを準備してみなさまのご参加をお待ちしております。

日時:2017年7月2日(日)14:00開場(受付14:15)14:30〜16:30

場所:福島県二本松市 市民交流センター2階

課題書『ウィチャリー家の女』ロス・マクドナルド著 小笠原豊樹訳

ハヤカワポケットミステリ刊 世界ミステリ全集〈6〉刊 ハヤカワミステリ文庫刊

*各自ご用意のうえ、当日までに必ず読了のうえご参加ください。

定員:12名

参加費:500円 学生無料

申込方法

◎専用アカウント nazotoki2013@mail.goo.ne.jp までメールでお申し込みください。タイムスケジュールなどのお問い合わせもこちらまで。

◎件名を「読書会のテーマ曲は薬師丸ひろ子」とし、メール本文にお名前と連絡のとれる電話番号をご記入ください。また、ツイッターアカウント@nazotoki2012でも受け付けております。

◎先着順で受け付け、定員に達した段階で締め切らせていただきます。ご了承ください。

◎終了後は食事会を開催します。自由参加、別会費で、会場は越前敏弥さんの『翻訳百景』(角川書店刊)159ページでも紹介されている名店杉乃家、メニューは浪江焼きそばを予定しています。

主催:翻訳ミステリー福島読書会AtoZ

後援:翻訳ミステリー大賞シンジケート

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