全国の腐女子の皆様とそうでない皆様、こんにちは! グルメと海外旅行とおしゃれと執事はお好きですか? さらに陰謀とギャグとセクシートークと謎の事件、あれやこれやをたっぷりつめこんだ痛快ミステリー、キリル・ボンフィリオリ『チャーリー・モルデカイ』(角川文庫)ここに参上!!

 当サイトで初めてチャーリー・モルデカイの名前が出たのは、今回翻訳された三角和代さんこちらの記事

 おおこれはすごく読みたい!と大変気になっていたのですが、それからわずか2年も経たない間に、なんと4作すべてが刊行されて驚くやらありがたいやら。その後、七福神で絶賛され、つい最近もストラングル成田さんによる、1作目『英国紳士の名画大作戦』、2作目『閣下のスパイ教育』レビューが掲載されていますので、こちらでは残り2作を簡単にご紹介することにしましょう。

 まず3作目『ジャージー島の悪魔』では、2作目でほとほと神経をすり減らした(?)チャーリーが、妻ジョハナと用心棒のジョックを連れてロンドンからジャージー島に引っ越してきます。乳牛で有名なこの小さい島は、イギリス本土よりもフランスに近く、自然の中で牧歌的な生活を楽しんでいたチャーリーでしたが、ご近所の奥さんがレイプ犯に襲われる事件が発生。実はこの島ではかつて”ジャージー島の野獣”が起こした恐ろしい事件があったのです。解決のため、チャーリーはオックスフォードの母校を訪ねることになりますが……。ちょっと『ウィッカーマン』を思い出させるような、閉鎖的な村でよそもの探偵が犯人探しをするミステリー。愛するジョハナを犯人から守るため、日頃軽口をたたくチャーリーも、今回ばかりは真剣にならざるをえません。

 そして最終巻『髭殺人事件』(原題は The Great Mortdecai Moustache Mystery )。実は原作ではここで初めて髭を生やすチャーリー。ところがジョハナのみならず、ジョック、さらには会う人会う人から、気の毒なほどに不評を買う髭。しかし洒落者で頑固なチャーリーはかたくなに剃り落そうとしません。ジョハナに冷たくされたチャーリーは、前話で登場した大学時代の恩師の頼みで、女性研究者の謎の事故死を調査するため再度オックスフォードへ。ジャージー島に残してきたジョックの代わりに、その名もホームズという若い刑事を助手にしたがえ、事件の解決に挑みます。相変わらず美味しそうな描写が満載、減らず口も絶好調な今作は、未完の最後の章だけはクレイグ・ブラウンにより補完されているそうですが、4作中もっともストレートな推理ものとなっています。

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 さて、今回めでたく全作翻訳刊行となった『チャーリー・モルデカイ』、ハリウッドでも映画化され、『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』というタイトルで日本でも先日公開となりました。スティーヴン・キング原作の『シークレット ウィンドウ』でタッグを組んだ、デヴィッド・コープ監督とジョニー・デップ主演で、共演はグウィネス・パルトロウ、ユアン・マクレガー、ポール・ベタニーとなんとも豪華な布陣。主演のデップは台本を受け取る前に、すでに原作を読んで惚れ込んでいたとのこと。前述のように、原作では4作目にして初めて口ひげをたくわえますが、製作スタッフは最初からひげのあるモルデカイを想定し、さらにすきっ歯というおまけを付け加えています。物語とキャラ設定はかなりオリジナルになっていますが、4作すべてから少しずつエピソードを使用しているので、映画をご覧になった方も、原作と照らしあわせて読むと楽しいですよ!

 ……で、腐成分はどうなのよ! としびれを切らした方すみません! 

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 いやーこれがもう、チャーリー&ジョックのお茶目な仲良しパラダイス!!!

 原作は最初独身だったため、おうちで2人肩を並べてTV観戦したり、ジョックがジーヴスもかくやというほどのかいがいしさを見せたり、さらにはご主人の命も救ったりと、それはもう楽しいのなんの! むっとしたらぬるいお茶を出すとか、細かいところがたまらないんですけど! 結婚した後でも離れられない2人(?)は、最後の最後まで息のあったコンビっぷりで、腐女子のハートをぐっとつかみます。

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 映画はというと、なんと! 原作をパワーアップしたバディ描写の充実度!! そして役に立つというレベルをはるかに越えたジョックのスーパー用心棒っぷりがすごい!!! ていうかどう考えても人間超えてます!!(笑) 原作1話の“あのエピソード”にもびっくりしましたが、映画版はもうジョック(ポール・ベタニー)でシリーズ作れるんじゃないかというほどの大活躍。ユアン君演じるマートランドはというと、原作よりずっとナイーブで、学生時代からジョハナに片思いという設定になってます。でも腐った貴女ならきっと「いやーこれ絶対好きなのはチャーリーの方なのに気がついてないだけだよね!」と思うはず(?)。

 そこらへんの微妙なニュアンスはぜひ劇場でお確かめください! でもせっかく世界無駄脱ぎ選手権映画部門で一、二を争うユアン君がマートランドなのに、脱ぎシーンがなかったですねえ。原作通りに作ればあったのに(笑)。

 原作には、『007 ロシアより愛をこめて』『わたしを愛したスパイ』をほうふつとさせるようなシーンや、エラリイの愛車であるデューセンバーグが出てきたりと、ミステリファンにはいろいろ楽しい記述がたくさんありますが、映画の冒頭は事件現場となったオックスフォードで、コリン・デクスターでおなじみのテムズバレイ警察が出てきます。他にもヴィクトリア&アルバートミュージアムや、どこかで見たことのあるロンドンの街並みが出てきますのでお楽しみに。

 そして原作と映画のラスト、ジョハナに見守られ、チャーリーはひげ剃りハサミを手にしますが、はたしてどうなるか? 答えは本と劇場で!

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20150209115208.jpg予告篇

『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』

2月6日(金)TOHOシネマズ スカラ座ほか全国超拡大ロードショー

オフィシャルサイト:http://www.mortdecai.jp/

配給:KADOKAWA

© 2015 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

♪akira

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  BBC版シャーロックではレストレードのファン。『柳下毅一郎の皆殺し映画通信』でスットコ映画レビューを書かせてもらってます。トヨザキ社長の書評王ブログ『書評王の島』にて「愛と哀しみのスットコ映画」を超不定期に連載中。

 Twitterアカウントは @suttokobucho

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