10分の休憩の間に全員で机をつり(名古屋弁)、島形式からスクール形式へ。前方にゲスト6名にお並びいただき、不肖大矢の司会で「ナゴトーーク! ディック・フランシス芸人」のコーナーが始まります。会場から質問を募り、豪華過ぎるこのゲスト陣にお答え戴こうという趣向。書けないこともあるので(え?)、一部だけ紹介すると
Q:今回がディック・フランシス初体験だった人に勧める「次の一冊」は?
A:『大穴』からの『利腕』。これは鉄板。
その2作と近いテーマということで『証拠』も一緒に。
本格ミステリが好きな人には不可能犯罪を扱った『興奮』を。
『度胸』が一番好きだが、これまで出てないところでは『重賞』。
ディック・フランシスは時期によって波があるが、息子との共著になって盛り返した。その作品群も。
Q:二文字タイトルが印象的だが邦題はどうやって決めるのか。
A:翻訳者も提案はするが編集者が決めることが多い。
ディック・フランシスの二文字タイトルはほぼ原題の訳通り。
シリーズ物は最初の3冊くらいでパターンが決まると、それを踏襲する。後になるとけっこう辛いかも(笑)
Q:競馬の魅力を教えて下さい。
A:いろんなギャンブルの中でも、推理する楽しみがある。
一頭の馬の子供や孫も出て来るというドラマ性も。
競馬場という場所もいい。
Q:菊池光の翻訳を味わうなら、どの作品?
A:ロバート・B・パーカーのスペンサーシリーズ。特に『初秋』。
スペンサーシリーズは加賀山さんが菊池さんのあとを継がれたが、シリーズ読者に違和感のない訳になっている。
フランシスの中で菊池色が出ているのは『骨折』。
菊池光唯一の女性作家の翻訳、マーガレット・ミラー『まるで天使のような』も是非。(←黙ってられず司会者なのに口を出しましたすみません)
この他、「冒険小説の未来について」とか、果ては人生相談のような質問まで飛び出すという盛況ぶり。どの質問にも、ひとつひとつに丁寧にご回答いただきました。ありがとうございました。
最後に「これから翻訳ミステリーを読もうという人たちにメッセージを」とお願いすると、北上さんから「読書は孤独な作業。たとえ99人がつまらないと言う本でも、あなたが面白いと思えばそれでいい。あなたは正しいんです。自信を持って」というお言葉をいただきました。あのとき、会場にうねりのように広がった感動をどう表現すればいいのか。『クリスマスのフロスト』では英国式カンチョーのやり方に最も時間を割いた名古屋読書会が、『寒い国から帰ってきたスパイ』では「ビーフティ不味そう」に終始した名古屋読書会が、『愛しき者はすべて去りゆく』では「名古屋=ボストン」ですべてを片付けた名古屋読書会が、まさかこんな感動のエンディングを迎えるとは。これを最後に名古屋読書会は解散した方が美しいんじゃなかろうか。しませんけども。
二次会は36名という大人数が参加ということで、立食形式。宴会担当幹事が探してきた店は広いフロアの中央に螺旋階段があるという謎のホール。皆さん自由に入り乱れ、交流を持ってらっしゃった様子。シンジケートのコンベンションで好評だった執事喫茶「ナゾー」が開店したり、北海道世話人ゆっちさんから札幌読書会の案内があったり、レジュメ担当幹事K氏から「今後、レジュメ作成はその作家や作品に思い入れのある人にどんどん参加してもらいます」という宣言が出たり、田口俊樹さんの大ファンというメンバーが涙ながらにメアドを交換したり、SF者の参加者から国際SFシンポジウムの宣伝があったりと、賑やかな会になりました。人数が多いときは立食パーティいいよ。さすが名古屋読書会が誇る宴会担当幹事である。
というわけで、昨年の料理実演読書会「ミステリーキッチン」に続き、2度目のスペシャル企画読書会も無事終了。ゲストの皆様のおかげで、本当に大盛況となりました。初心者の多い名古屋読書会に合わせて幅広いお話をして下さったゲストの皆様、本当にありがとうございました。
そして例によって完璧なレジュメ(しかも今回は掲載ダジャレを変えて3通りの版を作るという凝りっぷり! そのダジャレがこのレポの副題になってます)を作ってくれた加藤篁氏、競馬場オプションを段取ってくれたC嬢、赤を出さずにきっちり乗り切った経理担当I嬢、続々詰めかける参加者を右から左に捌いてくれた受付担当S嬢、文句無しの立食パーティを仕切った宴会担当T嬢という完全無欠の戦隊物ヒーローのような幹事団のみんなに心からの感謝を。今回もまた私は「君臨すれども統治せず」のスタンスでした。たぶんそれが成功のコツ。
最後になりましたが、ご参加下さった皆さんにも感謝を。名古屋読書会ではレジュメを始め、参加者の皆さんにどんどん「作る側」に入ってもらう予定です。次回は11月9日に、ついに腹をくくってアイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会』(創元推理文庫)でやるぞ! 黒後家好き、アシモフ好き、給仕好き、短編好きの読者諸君、第9回名古屋読書会を作るのはキミだ!