遅れに遅れて申し訳ありません。7月に二都市連続で開催された『ジーヴス読書会』のご報告をいたします。

 この読書会、開催日直前に押さえていた部屋の空調がきかないという怖ろしい事態が判明して会場を変更する騒ぎがあったものの、森村たまきさんにご参加いただけることになり、ちょうど東京ではジーヴスのお芝居がはじまり(http://enterminal.jp/2014/06/jeeves/)、しかも紀伊國屋書店グランフロント大阪店での森村たまきさんのトークショーに関連して、大阪読書会の選んだジーヴス関連本のフェア棚を作っていただけるという嬉しいおまけがつき、空調騒ぎにも世話人I作成のジーヴスうちわという可愛いお土産ができました。

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 そんなこんなで準備も進み、読書会メーリングリストには謎のメッセージが行き交います。

「はよきて、ジーヴス」

「ゆけるぞ、ジーヴス」

「おいでよ、ジーヴス」 

「ゴーゴー、ジーヴス!」

「ランチだ、ジーヴス!」(京都読書会にはランチを予定)

「みんなで、ジーヴス!」

第13回大阪読書会 7月20日(日)15時から 課題書『それゆけ、ジーヴス』

 開始時間の少し前から雨が降りはじめ、皆さんの足もとが気づかわれます。でも、東京からのゲスト、訳者の森村たまきさんと国書刊行会の伊藤さんがにこやかに到着され、参加者一同のテンションも↑。今回ゲストを含め参加者21名、初参加のかたは5名といつもより多めです。お菓子がずらり。

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 世話人Uの労作、勝田文さんのコミックの絵をお借りした登場人物表と、世話人KMのつくったウッドハウス作品リストを眺めながら、読書会開始です。

 司会はジーヴス歴20年の世話人Y。ゲストのおふたりを紹介したあと、まずはみんなが自己紹介を兼ねて一言感想を。それぞれいろんな切り口で楽しんだようです。

「生意気で小賢しい女の子と、やんちゃでバカな男の子が出てきて、小学生の教室に戻ったような気分」

「ジーヴスはドラえもん、のび太(バーティ)が泣きつくドラえもん」

「暇をもてあました上流人が遊んでいるっていう感じ。強烈な個性の人や、ちょっと意地悪な人もいるけれど、基本、嫌いになれない人ばかり」

「定型パターン、かけあいなどは吉本新喜劇と同じ。声をだして笑え、勇気づけてくれる」

「ジーヴスの台詞のこむずかしいところにはまりました。解決までに一度、どんでん返しがあるのもおもしろい」

「この本、こんなにいろんなエピソードがてんこ盛りだったんだと改めて感心」

「細かいディテールを楽しむのが好き。今回は、アナトールのこととか、もとの主人が牢獄にいたとか、アメリカの鳥のゴーストライターがうまいとか」

「バーティが好き。ビンゴ救援部隊を結成するときに、バーティもなぜだかお金を出していて、そのへんが愛すべきキャラだな〜と」

「短編小説だけれど、最後がジーヴス目線だったので、ミステリーを読んだような感じに。そういうことやったんや、ジーヴスって」

ジーヴス・シリーズとの出会いもいろいろ。

「大学生のころ、原書がテキストに使われて」

「シリーズ最初の『比類なきジーヴス』で?よしきたホイ?がツボにはまり、一気にシリーズを読破」

「ツイッターでジーヴスをジョニー・デップにというのを見て、興味を惹かれて(笑)」

「漫画の連載から。本にはなかなか手が出なかったが、思ったよりすらすらと読めました」

「執事が大好きなので(笑)、いい執事ものがあると薦められたのがきっかけ」

「今度の読書会にあわせてちゃんと読もうと14巻おとな買いをした(おー、というどよめき、拍手)」

「93年ごろイギリスにいて、友人からジーヴスのドラマのビデオを押し貸しされました」

 編集の伊藤さんは、森村さんの担当を前任者から引き継ぎ、「一読者として楽しんでいましたが、仕事となってもそれを忘れて楽しんでいます」

 ついついジーヴス=吉本論を推しすすめる大阪人の攻勢に、森村さんの反応が気になるところ。「大阪という笑いの本場で、こんなに評価され、しかもお笑いの殿堂、吉本新喜劇と比べていただいてありがたい」と、大人なコメントをいただき、ホッ。この後トークショーを控え、どこまで喋っていいのか悩むとおっしゃりながらも、東京でやっていたお芝居の話を。(バーティ役のウェンツくんがよかったそう♪)聞けば聞くほど、その舞台、大阪でも見たいな〜の声があがります。

 ジーヴス視点の最後の短編が人気でしたが、「ジーヴス、ひどすぎる」の声もあれば、「ジーヴス腹黒いけど、そこがおもしろい」という意見も。

「でも、ものぐさな詩人の話で、ジーヴスがかいがいしくバーティの世話をしていて、胸打たれるんです。この話、わたしのお気に入りです」と森村さん。

「べったりにならない緊張感があっていいですよね。バーティも生意気に反抗してみたり、ジーヴスだけじゃないとか強がり言ったり」

「でもジーヴス以外はみんなバカという設定ですから」

「お巡りさんにバーティをいじめさせるところ、ほんとに親戚が多いなと」

「上流階級にも親戚が多いけれど、使用人側にも多い」などなど、さまざまなディテールに話が弾みます。

 バーティのファッションセンスについて、意外にも(?)援護する声多し。「いつもジーヴスに阻止されるけど、世代間の格差でしょう。バーティだってトップモードが着たいだけ。市松模様のスーツなんて、インパクトありそうだし、似合うんじゃないかな」

「きょうは圧倒的に女性が多いですが(男性参加者はおひとり)、これは世界的に言うと珍しいことです。ウッドハウスのファンは男性ファンが多いですから」と、森村さん。

「スポーツマンシップとか関係するんでしょうか?」

「ウッドハウスは学園小説ぽいのです。スタートもそうでしたし、ターゲットは中学生以上の男性。書いていた雑誌も男性向けですし。でも、自分勝手で自由なニューウーマンを書きつつ、嫌な描き方はしていない。100年前でも男性中心主義は感じられず、今読んでも違和感がないのにはさすがだと思います」

 森村さんがジーヴス・シリーズを出して10年、最初に出版したころは?執事?も?腐?も?萌?も世間になく、日本ではユーモア小説は売れないと言われ、どこをターゲットに据えるかむずかしかったそうです。出してみると、ミステリー読者の人がまず反応し、やがて兆しのあった「執事ブーム」に乗ったのだとか。

 このへんでお時間となりました。トークイベントのあるグランフロントまでぞろぞろと歩いて移動です。雨もあがってよかった。長身のGさんが、人ごみのなかはぐれないように誘導してくれます。

(「竹」につづく)

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