第11回名古屋読書会『長いお別れ』『ロング・グッドバイ』レポート後編「小説にさよならをいう方法はいまだに発見されていない」
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すっかり恒例となりました、「次に読むならこんな本」。『長いお別れ』『ロング・グッドバイ』と続けて読みたい、同じジャンルや共通点のある作品をどんどん挙げていきます。
「かっこいいハードボイルド・ヒーローっている?」「ハードボイルドにしてビルドゥングスロマンのドン・ウィンズロウ『ストリート・キッズ』のシリーズ」「あたしはS.J.ローザンの『チャイナタウン』シリーズのビル・スミスが好きだな」「いやあ、やっぱりスペンサーでしょう。ロバート・B・パーカーの『初秋』とかね」「大矢さん、R・B・パーカーがI・W・ハーパーになってます」「そんなに飲みたいんですか」「マイクル・Z・リューインのアルバート・サムスンもいいよ。『A型の女』とか」「サラ・パレツキーも読んでー。女探偵ヴィクいいよ。『サマータイム・ブルース』をぜひ」「あ、女子ものならデボラ・クーンツの『私の職場はラスベガス』もお薦め!」「だったらP.D.ジェイムス忘れちゃだめでしょ。『女には向かない職業』」
「いやいや君たち、大事な名作を忘れてる。まずハメットの『ガラスの鍵』をだな」「エスピオナージュだけどフリーマントルの『別れを告げに来た男』はお薦め」「L.A.モースの『ビッグボスは俺が殺る』『トリプルX』の私立探偵サム・ハンター!」「いや、やはりハードボイルドといえばヘミングウェイ。『清潔で明るい場所』がいいよ」「ギャビン・ライアルの『もっとも危険なゲーム』も入れたい」「アステア・マクリーンの『ナヴァロンの要塞』は?」「ちょっと、ロスマク忘れてるじゃん!『さむけ』!」「だったらグレアム・グリーンの『第三の男』も」
「フィリップ・カーの『偽りの街』に始まるベルリン三部作も」「あれどっちかというとノワールでは」「信念を曲げないという点で、ネビル・シュートの『パイド・パイパー』を」「ジャンル超えていいなら、ダン・シモンズの『ハイペリオン』を進めたいなあ」「戦争の傷というところで、クイーンの『フォックス家の殺人』を」「戦争ならジャック・ヒギンズ『鷲は舞い降りた』も」「ああ、戦争の傷と男の友情なら吉田秋生の『BANANA FISH』を入れたい」「漫画もありかよ!」「男の友情ならテリー・ホワイト『真夜中の相棒』ははずせないでしょ」「友情?」「友情?」「うふふー」
「日本にもハードボイルドはあるよね」「大沢在昌の佐久間公シリーズ『雪蛍』とか」「結城昌治の『エリ子、16歳の夏』が好きですー」「藤原伊織の『テロリストのパラソル』も友情ものだよね」「実は時代小説にはけっこうかっこいいハードボイルドヒーローがいてですね、藤沢周平の『彫師伊之助捕物覚え 消えた女』なんてもろハードボイルド」「信念を貫く男の話はやっぱ時代小説だよ。山本周五郎の『樅の木は残った』とか」「ニヒリズムのヒーローの最高峰は笹沢左保の『木枯らし紋次郎』だと思う」「現代だと高村薫の『リヴィエラを撃て』『李歐』」「北方謙三の『危険な夏』とかの挑戦シリーズも」「生島治郎ははずせないでしょ。『黄土の奔流』に『追いつめる』」「河野典生『危険な夏』なんてのも」「法月綸太郎『頼子のために』もハードボイルドじゃない?」「殊能将之の『子どもの王様』も入れたいなあ」
「チャンドラーって、パロディとかオマージュも多いよね」「矢作俊彦さんの『ロング・グッドバイ』!」「荻原浩さんの『ハードボイルド・エッグ』は笑えるよ。ペット探し専門探偵なんだけど熱烈なマーロウ信者で、行動も物言いもマーロウそのもの」「あ、それの続編『サニーサイドエッグ』に大矢が文庫解説書いてます」「日本だとやはり原リョウだよね。『さらば長き眠り』とか、なんかチャンドラー三つ混ぜちゃいましたみたいな」「パロディならエリック・ガルシアの『さらば愛しき鉤爪』ははずせない。マーロウパロディの恐竜もの」「なんかどんな課題図書でも、次の一冊に『さらば愛しき鉤爪』って出てくるなあ」「復刊してくれー!」
うわあ、ぜんぶは網羅できてないかも。しかし当分退屈しないね、これは。
そして最後は事前に募集した推薦文コンテスト。司城賞・小塚賞・大矢賞が選ばれ、司城さんの『ロング・グッドバイ[東京編]』他が贈呈されます。
司城賞:「20代で読む『長いお別れ』と40を過ぎて読む『長いお別れ』は
たぶん別の話だ」(K藤氏)
小塚賞:「つらくても哀しくても、やらなくてはいけない時がある。
そんな疲れた人々への応援歌としても読めます」(H谷氏)
大矢賞:「フィリップ・マーロウはすべてのお父さんの憧れだった。
(ただちょっと…お母さんには分からないんだな)」(P猫さん)
さあこれでお開き。今回も、喘息に負けず頑張ってくれた会計担当いつみ嬢、その補佐で受付をやってくれたこいん嬢、無敵の二次会幹事たれきゅん嬢、事前に集まってくれた多くの常連助っ人たち、大矢・加藤と並んで一班率いてくれた片桐氏、早川書房さんからグッズをもらってくれたゆ〜たん嬢、レジュメに寄稿して下さった皆様、ゲストの皆様、そしてすべての参加者の皆様のおかげで、無事に終了することができました。──え、ひとり忘れてる? いえいえ、覚えてますとも。あれほどのレジュメを作ったにもかかわらず、人生の愛読書を完膚なきまでにズタズタにされ、じっと耐えてくれた加藤篁幹事、どうもありがとう。あなたこそが、ハードボイルドですよ。
さあ、あとは飲むだけ……おっとそうだ、次回の告知をしておかねば。
第12回名古屋読書会は7/26(土)開催予定。課題図書は──東海道新幹線開通50周年を記念し、名古屋はオリエンタルカレーのお膝元でもあることから、アガサ・クリスティ『オリエント急行の殺人』だ! 版元・訳者はすべて自由。オリエント急行の終着駅はフランスの「カレー」だって知ってたかね、モナミ? まさにオリエンタルカレーの都市にふさわしい一冊ではないか。告知は6月下旬の予定。刮目して待っときゃあ。ハヤシもあるでよ!
◇大矢博子(おおや ひろこ)。書評家。著書にドラゴンズ&リハビリエッセイ『脳天気にもホドがある。』(東洋経済新報社)、共著で『よりぬき読書相談室』シリーズ(本の雑誌社)などがある。大分県出身、名古屋市在住。現在CBCラジオで本の紹介コーナーに出演中。ツイッターアカウントは @ohyeah1101。 |
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