4月某日、札幌読書会はロバート・ベイリーの胸アツ法廷シリーズ、『ザ・プロフェッサー』『黒と白のはざま』『ラスト・トライアル』の読書会を行いました。
 課題書3冊という高めのハードルでしたが、多くの方にお集まりいただき感謝しております。読書会をきっかけにシリーズを手に取られた方が、「3冊多い! と思ったけど、『ラスト・トライアル』で、全部読む意味がわかりました!!」と仰っていて、世話人、ついニンマリしてしまいました。そう、今年の新刊『ラスト・トライアル』は、単独でも面白いですが、前のお話を知っていると興奮度がグッと上がるのですよ。 
 訳者の吉野弘人さんにもご参加いただき、翻訳の経緯(吉野さんの持ち込み企画だそうです)から、4作目の予告まで貴重なお話を伺うことができました。

 ざっくりとシリーズの説明をしますと、証拠論の権威としてアラバマ大学で教えていたトム・マクマートリィ教授(通称:教授)が、陰謀により大学を追われ、弁護士として現役復帰。会社ぐるみの隠ぺいがあるトラック事故の裁判に立ち向かう『ザ・プロフェッサー』。かつての教え子ボーセフィス・ヘインズ(通称:ボー)が、KKKの元メンバーを殺した容疑をかけられ、教授が弁護を引き受けるのが『黒と白のはざま』。そして『ラスト・トライアル』は…読んでのお愉しみです。ちなみに本作について読書会で出たパワーワードは、「クズみたいな男は殺してよし」。

 法廷での丁々発止はもちろん、人種差別問題、アラバマ大学フットボールチーム(教授もボーも元選手)の熱い繋がり、成長する若者と老いや病と向き合うシニアたちの関係、胸糞悪い悪役たち、犬…たくさんの読みどころ、そして魅力的なキャラが満載。というわけで、読書会では皆さんに「ご贔屓キャラ」を教えていただくことにしました。
「教授ってモテすぎじゃない? 島耕作っぽいw」
「やっぱりボーですよ! 彼のプライベートが心配」
「のびしろがありそうな若き弁護士リック! 今後の成長に期待したい」
「いやいやモップ頭の検事パウエルでしょ、ひとりでザリガニ祭りでエンジョイしてくる不思議なノリ。しかも法廷の天才!」
「検事のヘレンさんがカッコいい。ぐいっとウィスキーを呷る姿がいいよね」
「…私…ジムボーン(<悪役)が気になる…」(一同驚愕)
とまぁ、キャラの話だけでも小一時間イケそう。

 やれあのシーンで熱くなったとか、いや逆に引いたとか、登場人物が軒並みビッグサイズすぎて暑苦しいとか、みんな酒の飲みすぎだしそのまま運転するのどうよとか、基本リベラルなのに保守にもウケる作風って不思議ねとか、トムの証拠論の本(=業界のバイブル)って黄門様の印籠みたいwとか、あのキャラがほぼナレ死で終わるとはwwとか、笑ったり考え込んだりモヤりを共有したり、3冊あると話が尽きません。

 またアラバマ大学フットボールチームの話にもなりました。プロにも匹敵する人気で、町の日常会話でも「ロール・タイド!(=頑張って!)」と使われるほどです。
「法廷モノは用語や制度がわからなくて苦労するイメージを持っていたけど、今回はそれよりフットボール愛がピンとこなくて戸惑いました」というお声もあり。
 確かに。日本では例えるものが思いつかないですね。ポール・ベア・ブライアントコーチの時代のスペシャル感は…川上巨人9連覇とか?
「連邦の法律で男子のスポーツも女子のスポーツも同じ金額を使わないといけないから、大学はすごい努力で女子スポーツを強くしようとするんですよ」と教えて下さる方もあり。 
 ほえ~~だからアメリカってなんでも強いんだねーと納得。

 冒頭でも申し上げましたが、『ラスト・トライアル』はぜひとも『ザ・プロフェッサー』を読んでから手に取っていただきたい。さすればまず冒頭でヘンな声が出る。はひふへほを全部同時に言ったみたいな声が。最初に大きな設計図があって書かれたシリーズだということがわかるのです。事件は決着しても、登場人物たちの行く末が気になって仕方なくなります。そしてめちゃくちゃ意味深な著者あとがき。吉野さんも「あとがきが一番のどんでん返しと言われました」と笑っておられましたが、まったくもってその通りです。さて、シリーズ最終作 The Final Reckoning はどうなるか? すでに読書会参加者の期待はパンパンに膨らんでいました。

・誰か死んじゃう? 死ぬなら誰?(犬はダメ、絶対)
・ボーの結婚生活はどうなる?
・教授の〇〇〇はどう描かれる?
・リックと彼女の恋の行方は?
・ジムボーン、オマエは最期を迎えるのか?
などなど気になることだらけ。ここはなんとか吉野さんから情報を引き出したい。

―――次作はどんな感じですか?
「実は…4作目はまずエピローグを読みました(笑)」
―――わかる! その気持ちわかる! で?
「オールスター総出演の西部劇っぽい展開…とだけ申し上げておきましょう」
―――おおお! 発売はいつですか?
「来年1月の初旬ですね」
―――えっ…あ、あのもうちょっと早く…なりませんか? ワスレテシマウ…
「こればっかりは僕にはどうにも(苦笑)…多分ですが、次のボーのシリーズもお届けできるかと思います」

 素晴らしい! まだまだロバート・ベイリーに楽しませてもらえそうです。さぁみなさん、年内にこの3冊を読みましょう。そうだ、今年の忘年会(!)は気になるあれこれを集めて「胸アツ4作目大予想!」でもしようじゃありませんか。渇望MAX状態で手にする4作目は、汗かいた後のキンキンに冷えたビールの如く一気にいけるハズ。

 まぁそんなわけで(<強引なまとめ)、翻訳ミステリファンは今年も大忙しです。読む本が死ぬほどありますよ! 気合を入れてまいりましょう。シリーズからこの言葉を。
 Wide ass open!(訳:ケツの穴全開で行きましょうや、親父っさん!)