「リラ冷え」・・・それは北海道でライラック(=リラ)が開花する5月後半に、一時的にぐっと冷え込む日がある時をいいます。5/17(土)、リラ冷えどころか冬に戻ったかのような冷気と暴風雨の日に第8回札幌読書会を行いました。

初っ端から世話人がのんびりランチをした挙句に遅れて会場入りするという緊張感のなさ!大急ぎで荷物を広げ、「ハイハイ、名札つけて、ドリンクの注文は各自でね、スィーツも食べてね、え?席?適当にやって適当に、1、2,3・・・え?一人足りない?誰?全員いる?なんで?あ、アタシがアタシを数えてない?あ〜まぁいいや、とりあえずオッケー(byローラ)」・・・いろいろ考え直すべき時期にきていると思います。

課題本はアン・クリーヴス『大鴉の啼く冬』です。一昨年、千葉読書会でも取り上げた本であるというご縁で樫葉@猟奇の鉄人さまから永久保存版の豪華冊子をご提供下さいました。参考までにといただいた当時のレジュメなども配布。多分これだけでアン・クリーブスとシェトランド四重奏を理解できるんじゃないでしょうか。この場をお借りして樫葉さまにネット上から投げキッスを送りたいと思います。(人それを厚顔無恥という)

定休日に貸切させていただいた「ソクラテスのカフェ」に集まったのは16名。気になるディスカッションの内容は・・・

(1)優れたフーダニット作品

最後まで犯人がわからなかった人が圧倒的多数。特に8年前に起こった少女失踪事件の真相に関しては「まさかそうとは思わなかった!」の声が多かったです。「あらためて伏線を探したけど見つけられなかった」という方もいれば、「そういえば◯◯◯って書いてた」「え?どこどこ?」みたいな会話もありで、フーダニット作品として充分満喫できたようです。

犯人がわかった後は、事件当事者たちがその後どんな生活を人生を送ったんだろうと思いを馳せずにはいられません。

(2)丁寧な描写

事件の展開が少々遅いのでもどかしく感じることもあるけど、全体的には読み易いと好評価でした。抑えた筆致と文体で丁寧な人間関係の描写をしつつも視点が小気味良く変わることでテンポよく読めるみたいですね。

シェトランドの気候風土と結びついているであろう独特の閉塞感もよく表現されていました。この辺りは同じ亜寒帯に属する住人としてしみじみと感じ入るところがあるのかもしれません。

(3)シェトランド版「ツィンピークス」?

大人同士、ティーンエイジャー同士、大人と子供、島の人間と余所者などいろいろな対人の距離感や微妙な摩擦がよく伝わってきました。

魅力的なティーンエイジの女の子が殺されたことで、小さな町の中に閉じ込めていたいろいろなものが少しずつ炙りだされてくる様子は「ツィン・ピークス」を彷彿とさせます。

(4)警察が不甲斐ない

「なんかさ、警察が全然仕事してないよね?」の一言で蜂の巣をつついたように「そーだ!そーだ!」の嵐。「科学捜査とかしてる様子が全然ない!」「殺された子はどうせ余所者だから真剣に犯人探す気ないんじゃない?」「犬の方がよっぽど役に立つ!」(←ご一読下されば意味がわかります)

地元の捜査官ペレスにも「これといったことしてないよね」「ぶらぶら人と話しばっかりしててさ」「ハッキリ言って棚ボタ?」などと辛口批評がある中で、「私、ペレス好きです!ダメダメ悪く言わないで!」という“ペレス萌え”の女子もいました(笑)

約2時間の読書会を終えて二次会へ。熱いディスカッションで渇いた喉をたっぷり潤し、さらに隠し階段(!)のある梅酒BARで三次会。ここで夜の部から参加の男子より熱いペレス推しがありました。「いや、俺さぁ、読み始めた時はなんかこの話は好みじゃねーなーって思ったんだけど、ペレスが出てきたらめっちゃくちゃ共感しちゃってさ。あの感情の垂れ流し!もう他人事とは思えないっ!」

読書会で「ええ?ペレスってそんなにいい?」と言っていた人たちもこの勢いに押され、なんとなくペレスってあれでいいような、そしてちょっと可愛いような、しょうがねぇな認めてやるか的な気持ちになりました。

シェトランド四重奏、この後「夏」「春」「秋」と続きます。頑張れペレス!(感情を)垂れ流せペレス!見届けてあげるからねペレス!

以上、リラ冷えもなんのその、平常運転の札幌読書会でした。

(あまりに寒かったので道外からの遠征組が風邪をひかなかったか心配です・・・)

さて!ここからは今後の予定をお知らせしたいと思います。

【8月9日(土)開催 『虚無への供物』読書会in小樽】

小樽文学館の研修室にて行います。

この時は文学館で企画展「没後60年 中城ふみ子と中井英夫展」を開催しています。読書会の前に企画展を見学するコースがオススメです。

夏の爽やかな海風、レトロな街並み、ムードたっぷりの運河、裕ちゃんが愛した「俺の小樽」・・・これを逃す手はないんじゃありませんか?

お申し込みは随時受付中。ご希望の方は sapporo.readingparty@gmail.com までご連絡下さい。

【10月4日(土)開催決定!『ゴーストマン』 読書会】

4月の翻訳ミステリー大賞授賞式の余興(!?)として行われた出版社対抗ビブリオバトルで見事チャンプ本に選ばれた『ゴーストマン』(文芸春秋社 8月刊行予定)の読書会です。

(ビブリオバトルの様子はコチラの記事をご覧ください)

ビブリオバトルのチャンプ本を積極的に読書会で取り上げよう!という試み、ひょっとして札幌が皮切りになるのでしょうか。担当編集者永嶋氏曰く、「カッコいい大人の男の物語」「4千冊に1冊の大型新人」とのことで、こりゃーもう発売と同時にGETしなきゃ!ですよ。

しかし、これだけでは終わらせませんよ。バトルに参加した他の本だって面白そうじゃないですか。というわけで、オプション企画「ビブリオバトル参加作品品評会」もやっちゃいます。

オプションですので有志の方だけでけっこうです。『NOS4A2』(小学館)、『ペナンブラ氏の24時間書店』(東京創元社)、『ミステリマガジン700【海外篇】』(早川書房)、『ライフボート』(集英社)の中から気になるものを読んで(何冊でもOK♪)、貴方の感想を教えて下さい。準備期間がまだまだあります。いろいろ読んでみましょう。

時期が近くなりましたら告知をさせていただきますので、お楽しみに。

こんな感じで、札幌夏の陣と秋の陣はもう決まっております。

そしてすでに年末企画もじわ〜っと進行中(早ッ!)。皆様のお越しをお待ちしております。

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