例年のごとく、最後に、◆2021年のクラシック・ミステリ◆という年間回顧を書いています。
■小森収編『短編ミステリの二百年6』
『短編ミステリの二百年』が6をもって完結した。1~6まで、収録数全編71編の大アンソロジーである。このアンソロジーを特徴づけているのは、各巻に編者の長編評論(総頁数1300頁弱)が付されていることで、読者は通読することで、実作と批評の両面から、短編ミステリの大海原の海図を手に入れることができる。
第6巻は、1970代前後の作品を中心にセレクト。時代は古いが、貧富の格差、依存、レイプ、家庭内暴力、離婚家庭といった現代にも通じるアクチュアルな問題を積極的に扱った作品が多い。
1970年代は、短編の市場が狭まり、英国では『ウィンターズ・クライム』というオリジナルアンソロジーが注目すべき存在だった時代でもある。本編のうち、数編は『ウィンターズ・クライム』から採られている。
ジョイス・ハリントン「
ルース・レンデル「しがみつく女」は、夫に依存する女を描いてホラーのように話が進んでいく。
ウィリアム・バンキア「交通違反」は、交通違反の男が失踪中の重罪犯であることが判明するが、男は巡査部長に金と引き換えに見逃すことを提示して。幕切れはあっけにとられるが、警官と犯罪者の会話の緊張からの緩和が見事。
ジェフリイ・ノーマン「拳銃所持につき危険」は、レイプの被害者の問題に真正面から取り組んだMWA受賞作。題材は重いが結末に救いがある。
パトリシア・ハイスミス「またあの夜明けがくる」の主人公は、子だくさんの家庭内暴力が日常茶飯の家庭の主婦。夢の後の現実の悪夢がやるせない。
ジェイムズ・マクルーア「パパの番だ」離婚した男が現在の交際相手を伴って子どもたちと休日を過ごす。不穏さが増していく中で、結末の一閃。その切れ味が忘れ難い。
デイヴィッド・ウィリアムズ「バートウォッチング」は、銀行家マーク・トレジャーを主人公にした本格物。子どもの絵からの恐喝、殺人、謎の発生という構成が巧みで意外性も十分。
マイクル・コリンズ「最期の叫び」隻腕探偵ダン・フォーチュン物。謎解きにも定評のある作家だが、これも墜落死を扱った謎解き寄りの作品。
ローレンス・ブロック「アッカーマン狩り」同一姓の男女が次々と殺されて。ミッシングリンク物への言及もあるが、本編が扱うのは別の興味。
スタンリイ・エリン「家族の輪」凡庸な男はいかにしてヒーローになるか。おかしくて、しかもゾクリとさせる、さすが名手。
クリスチアナ・ブランド「ジェミニ―・クリケット事件(アメリカ版)」
クリスチアナ・ブランド「ジェミニ―・クリケット事件(イギリス版)」
結末等が違うアメリカ版とイギリス版を並置し、精読するというかつてない大胆な試みは、全6巻の華麗なるフィナーレと呼ぶにふさわしい。
密室での弁護士殺しと離れた場所での警官殺し。華麗な多重解決の妙技をみせながら、謎解きを超えていく要素をもつ名編。編者は、二十世紀最高の短編ミステリとして本作を推し、アメリカ版とイギリス版を精読しながら、ディテクションの小説とクライムストーリーという短篇ミステリの歴史を貫く拮抗する二色の糸の融合をみている。
編者は、80年代以降の短編ミステリ(特にMWA賞受賞作)にはかなり冷淡で、ローレンス・ブロックが4度のMWA賞をとり、ひとり勝ちという状態になったのも、「ブロックが他の作家を圧倒しているのではなく、ほかが低迷しているだけのように、私には見えます」と書いている。この辺が、1970年代前後の作品で打ち止めとされた理由だろう。
編者の評論には、少年期にEQMM~ミステリマガジンに出逢った読者の読書史という側面もある。編者の個々の作品に対する態度-良いものとそうでないものをはっきりと分け、おしなべてかなり厳しい評価-は、大いに同誌に影響され、彫琢されたものであろうし、一見意外な作品のセレクトも同誌の読者には大いに頷けるところがあるものだろう。
■ドロシー・L・セイヤーズ『ピーター卿の遺体検分記』
本書は、ドロシー・L・セイヤーズのピーター・ウィムジー卿物第一短編集の邦訳(「アリババの呪文」だけは、先行訳書『モンタギュー・エッグ氏の事件簿』に所収)。11編を収録。うち、7編は、創元推理文庫『ピーター卿の事件簿』『同Ⅱ』で読めるが、他4編は、アンソロジー収録や雑誌掲載のみだった。
ピーター卿については、今更紹介の必要はないだろう、素人探偵の代名詞の一人。初期のピーター卿は、ノンシャランとした博識の青年貴族で、忠実な従僕バンターとともに、事件に飛び込んでいく。
「鋼の指を持つ男の忌まわしき
「
「メリエイガー伯父の遺書をめぐる魅惑の難題」 冒頭から従僕のバンターがクロスワードパズルに熱狂しているが、これ全編クロスワードパズルづくしの遺書探し。非英語民にはとても太刀打ちできそうもないが。
「瓢箪から出た駒をめぐる途方もなき怪談」 疾走するバイクから落ちた鞄には人の首が。これもピーター卿はひょんなことから関与する。
「
「不和の種を巡る卑しき泣き笑い劇」 中編といっていい長さ。田舎の友人宅を訪れたピーター卿は、ある嫌われ者の葬儀の直前、ピーター卿は、首のない馬がひく馬車、首のない御者を目撃する。遺言状の奇矯な設定、田舎村の雰囲気、ファンタスティックな要素とメロドラマが渾然一体となった名編。
「逃げる足音が絡んだ恨み話」 友人の医師宅を訪れたピーター卿が遭遇した殺人事件。台所の些細な違和感を見逃さず、意外な真相を喝破する。トリック良し、推理良しの好編。
「嗜好の問題をめぐる酒飲み相手の一件」 新型兵器を巡って二人のピーター卿が登場。利きワイン勝負となる進行が楽しい。本邦の美酒ミステリアンソロジーにも採られている。
「竜頭に関する学術探求譚」ピーター卿の10歳になる甥っ子が買った16世紀の古書籍に秘められた宝探しの冒険。書物狂ピーター卿の博覧強記が謎解きの一助となる。
「盗まれた胃袋をめぐる釣り人の一口噺」 瓶詰の胃袋盗難事件という喜劇的な事件の裏事情とは。
「顔なき男をめぐる解けない謎」 顔をめった切りにされた被害者の謎。現場の数少ない手がかりから犯行のおおよそを解き明かす推理も見事だが、その動機も特異で、リドルストーリー風な結末もインパクトを残す。作者も職を得ていた広告業界が舞台になっているのも興味深い。
ピーター卿は、好奇心から探偵役をやっているのであって、依頼人が現れて謎を解くという形式は少ない。事件の発生前から登場する短編も多く、その事件との関わるスタイルは融通無碍。
扱う事件の奇矯さは、英国名物である奇人の登場の多さにも因っている。「鋼の指をした男」や、クロスワードや暗号で奇妙な遺言や胃袋を残す男たち。そのいかにも英国流、エキセントリックな世界で、天使の如く上機嫌で博覧強記のピーター卿が様々な引用句を撒き散らしながら、謎を解く。その推理譚は、一編のファンタジーに近づいていくのも道理だろう。
でも甘々なファンタジーではない。「逃げる足音が絡んだ恨み話」「顔なき男をめぐる解けない謎」でのピーター卿の推理は、人間心理に切っ先の鋭い刃を向けているようでもある。
その洞察に裏打ちされたファンタスティックな物語であることが、ピーター卿の推理譚を高みに引き上げている所以でもあろう。
■バート・スパイサー『嘆きの探偵』
バート・スパイサー『嘆きの探偵』(1954)は、『ダークライト』(1949)に続く私立探偵カーニー・ワイルド物の翻訳第二弾、シリーズとしては、6作目に当たる。『ダークライト』は、カーニーの人間味、簡潔な比喩と会話や謎解き要素が印象的だったが、本作は、ミシシッピ川をクルーズする蒸気船をメインの舞台とするかなり動きのあるストーリーだ。
警察の捜査に加わったカーニーは、銀行強盗犯の潜伏先の銃撃戦で肩を負傷し、犯人を取り逃がす。おまけに、カーニーが恋人だと思っていた警部補の娘が自分の部下と結婚するというショッキングなできごとが続く。カーニーは、体の傷も心の傷も癒えないまま、警察の依頼で、逃走した犯人が紛れ込んだと思われる蒸気船に乗り込む。
カーニーは、『ダークライト』から時を経て、所員12人を雇用する探偵事務所をやっている。ハードボイルドの主人公らしくなく、彼は事務所の評判を気にする経営者でもあるのだ。
本編のシンシナティ発オハイオ経由ニューオリンズ着蒸気船ツアーは、単なる添え物というわけではない。作中で語られるミシシッピ川の航行の歴史は、マーク・トウェインの時代まで及び、航行権を巡って血の闘争があったこと、かつての航行の困難さなども語られる。アメリカ近代史への言及も多く、蒸気船幹部が皆、南北戦争で敗けた南部びいきというのも面白い。カーニーは、「南部はまた復活する」と調子を合わせて彼らと打ち解ける。この辺の歴史への関心は、著者のものなのか、ハードボイルド小説に似合わない一面をもっている。
カーニーは、タフすぎることはなく、直情径行の気味はあるが、ハードボイルド探偵としては、知も情もあるナイス・ガイ。
登場人物もそれぞれに個性的だ。特に、各地の逸話を見ていたように、のべつ喋りまくる元香具師を自称する男のキャラクターがユニークだ。それに加えて、船には、カーニーの心を癒す写真家のエレンという美女も乗っていた。
最高のディナーや酒、ダンスやギャンブルが提供される豪華船にも、カーニーへの脅迫や殴打事件など不穏な出来事が続き、クライマックスの舞台は、ニューオリンズのエキゾティックなマルディグラ(謝肉祭)になる。犯人絞り込みの決め手となるのが、マルディグラの仮装の衣装というのが、気が利いているし、単純な事件に見えても、さらに秘められた奥があるのもいい。
ミシシッピ川のクルーズ体験と犯人探しに加えてロマンスも楽しめる、もてなしのいい作品。
■ヒュー・コンウェイ原作 黒岩涙香訳述 高木直二編集『法庭の美人』
昨年訳されたヒュー・コンウェイ『ダーク・デイズ』(1884) を、明治21年(1888)年に黒岩涙香が翻案した『法庭の美人』がPODで発刊された。この本の刊行は、明治・大正期の翻案小説を親しみやすい形で復刊し、原作を新たに翻訳する「早稲田文庫プロジェクト」の一環ということだ。
『ダーク・デイズ』刊行時に、国会図書館がウェブ上で掲載している『法庭の美人』を覗いてみたが、かなり手ごわい印象だった。しかし、新字、新かな等を用いた本書はかなり読みやすい。涙香は、この序文で、一度読んで記憶しているところに従い自由に記述した、書き終わるまで一度も原書を参照となかったという趣旨のことを述べている。「余は翻訳者をもって自任する者に非ざるなり」とも書いている。
原書にとらわれなかったゆえ、主人公の医師の懊悩などはかなりすっぱり削られ、二段組で80頁程度。サスペンスフルなストーリーに集中しているところが、読者にも大いに受け入れられたのだろう。第八回では、翻案者は、「読者よ」と6回も呼びかけている。こうした文体も読者を惹きつけた要因だったと思われる。
原作よりも主人公の母親が勝気だったり、「西洋にては、若夫婦必ず旅行する例なり。これを蜜月の旅という。」という注釈があったりするのが面白い。
それにしても、原作の悪女 (真の悪女ではないが) が日本名「お悪」というのは、分かりやすすぎて笑ってしまう。
■浅倉久志編・訳『ユーモア・スケッチ傑作展1』
かつて、早川書房から三巻本で刊行された『ユーモア・スケッチ傑作展』(1978~1983) 等を中心に、その選集の元になったミステリマガジンの連載で未収録作品も含めて、全四巻の大全としてお目見えだ。
アメリカ狂乱の1920年代は、アメリカンユーモアの黄金時代でもあった。アメリカで盛んに書かれた小説ともエッセイともつかない短文に、「ユーモア・スケッチ」の名称を冠して読者に提供してくれたのは編訳者の大きな功績だ。ナンセンスの極致「クレイジー二人旅」、とことんとぼけた「橋の不思議」、名前ですべてが決まってしまうと説く「ロジャー・プライスの人名学理論」、マナー本パロディ「冠婚騒災入門」、本文と注が喧嘩をはじめてしまう「チュウチュウタコかいな」などなど、頬がゆるまないものはない。ときおり取り出して何度も笑えるのが本書の楽しみ。大全を書架に置かない手はない。
◆2021年のクラシック・ミステリ◆
昨年は、「コロナも収束し、不安なく不要不急に浸れる年になることを祈りたい」などとのんきな希望を書いたが、2021年も、コロナ禍の年だった。これを書いている現在も、オミクロン株が猛威をふるっている。果たして、今年は、出口が見えるのだろうか。
2021年は、黄金期の作やノワール作でも、これ一作というのが見当たらなかったのが、残念といえば残念。クラシックミステリの提供という面では、創元推理文庫、論創社、国書刊行会というところを除けば、散発的なものにとどまった感がある。
一方で、ミステリ周辺では、オルコットの悪女スリラーが出たり、ビッグネームの重要なピースであるジェイムズ・M・ケイン『ミルドレッド・ピアース』、シャーリイ・ジャクスンの第一長編が出たりと、ミステリ鑑賞の裾野を広げている。
古典期では、『ダーク・デイズ』『マクシミリアン・エレールの冒険』等注目すべき埋もれた作品の発掘も続いている。
プライベートレーベルでは、〈ヒラヤマ探偵文庫〉は、精力的に「クイーンの定員」の未訳等の紹介を続けているし、ROM叢書や別冊Re-ClaM等でマニアを喜ばせる黄金期の長編が訳されるなど注目すべき状況が続いている。
海外は、クラシックミステリの復刊ブームが続いているようで、こんなときだからこそ、旧きを訪ね新しきを知る余裕をもちたいものだ。
*掲載月の関係から、一部2020年刊行作を含む。タイトル後の数字は、掲載月。
■古典期■
ミステリの源流とする説もあるゴシック小説、アン・ラドクリフ『ユドルフォ城の怪奇』(上・下)10が初邦訳。冗長さを感じても、怪奇幻想味溢れる一大タペストリーにはやはり眼を瞠るし、ポー以前の探偵小説への接近として見逃せない
ヒュー・コンウェイ『ダーク・デイズ』9は、コリンズ以降の展開を示す重要作。黒岩涙香が初めて手掛けた『法庭の美人』の原作としても注目。
アンリ・コーヴァン『マクシミリアン・エレールの冒険』5は、ホームズに先だって、エキセントリックな天才型の探偵を創造した作。
ルイザ・メイ・オルコット『仮面の陰に』3は、『若草物語』の作者の悪女物スリラーという珍品。
R.L.スティーヴンソン&ファニー・スティーヴンソン『爆弾魔』5は、一筋縄ではいかない重層的な物語の初邦訳。英国冒険小説に燦然と輝くR・L・スティーヴンスン『さらわれて』11の久しぶりの邦訳。
■黄金期■
黄金期のがっちりした謎解き物が少なかったのは、残念。レオ・ブルース『ビーフ巡査部長のための事件』2は久しぶりのビーフ物で、その批評精神に渇を癒す。ドリス・マイルズ・ディズニー『黒き瞳の
謎解き興味を中心にしたものでは、文筆家の同好会の事件、アメリア・レイノルズ・ロング『〈羽根ペン倶楽部〉の奇妙な事件』4、孤島のリゾートという舞台が異色なイーニス・オエルリックス『〈アルハンブラ・ホテル〉殺人事件』11。
J.S.フレッチャー『ベッドフォード・ロウの怪事件』6は、いかにもフレッチャー流のテンポのいい捜査小説。ダフネ・デュ・モーリア『
■ポスト黄金期■
ナイオ・マーシュ『オールド・アンの囁き』6は、英国らしい田園ミステリにしてそれを逸脱していくような視座をもつ佳品、コリン・ワトソン『ロンリーハート・4122』2は、作者の持ち味が全開した作品として屈指の作。D.M.ディヴァイン『運命の証人』6は、最後から二番目の邦訳だが、残り物にも福あり。幾つもの驚きが待っている。
40年近く邦訳がなかったアーサー・アップフィールド『ボニーとアボリジニの伝説』8は、舞台も人物も魅力的だ。メアリー・スチュアート『クレタ島の夜は更けて』11は、ギリシャ三部作の一作。エキゾチズムとロマンスとサスペンスの渾然一体は自家薬籠中のもの。
シャーリイ・ジャクスン『壁の向こうへ続く道』12は、作者の初長編のストレートノベルだが、これでジャクスンの長編がすべて訳されたのは快挙。
イアン・フレミング『007/ロシアから愛をこめて』12は新訳。高いリータービリティと英国のダンディズムの魅力。
■ノワール/ハードボイルド/警察小説■
こちらも、少し寂しかったが、ジェイムズ・M・ケイン『ミルドレッド・ピアース』4は、映画でも著名なケインの未訳作。離婚した母親を主人公にしたストレートノベルは、ノワール的な側面ももちつつ要約を拒む豊饒さをもつ。ジム・トンプスン『漂泊者』4は、自伝小説『バッドボーイ』の続編。フランク・グルーバー『正直者ディーラーの秘密』4は、ラスベガスが舞台。サム&フレッチャー物全訳に向けて着実に駒を進めている。
R・オースティン・フリーマン『ソーンダイク博士短篇全集Ⅱ 青いスカラベ』1、『ソーンダイク博士短篇全集Ⅲ パズル・ロック』5で全集が完結。科学的捜査手法をベースに黄金時代まで書き続けられてきた作品群には、謎解きミステリが進化発展してきた軌跡が見出せる。
ラジオドラマのシナリオから直接訳されたという、エラリー・クイーン『消える魔術師の冒険』6は快挙。フェアプレイに徹しながら驚きを演出するクイーンの手際が存分に発揮されていることは大きな喜び。レックス・スタウト『ネロ・ウルフの災難 外出編』6は、『ネロ・ウルフの災難 女難編』に続く、ウルフの嫌いなものシリーズ。
リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク『皮肉な終幕』9は、刑事コロンボの生みの親コンビによるオリジナル短編集で、企画賞物。
平山雄一氏の古典ミステリの紹介はとどまることがない。
「隅の老人」「思考機械」に続き、2020年は、ホームズの真のライヴァルといえる凡人探偵『マーチン・ヒューイット[完全版]』7が出た。
さらに、ヒラヤマ探偵文庫では、ジョージ・シムズ『女探偵 ドーカス・デーン』6、クリフォード・アシュダウン『ロムニー・プリングルの冒険』11、ジェレット・バージェス『不思議の達人(上) 』12と「クイーンの定員」短編集に、ジョージ・R・シムズ他『英国犯罪実話集』8が出た。
アンソロジーは、小森収編『短編ミステリの二百年 4』1、『短編ミステリの二百年 5』7が出た。
ほかに、翻案物として、三津木春影翻案/北原尚彦編『浮出た血染めの手形-三津木春影翻案探偵小説集』4。
■評論その他■
レジス・メサック『探偵小説の考古学』8は、遥かギリシャの時代までを望み、科学的思考と探偵小説の関係を体系的に跡付けたマイルストーン的な大著が訳出されたのは驚きだった。
ジョゼフ・グッドリッチ編『エラリー・クイーン 創作の秘密』6は、ダネイとリーの書簡集だが、『十日間の不思議』等の中期の名作の背後に、敵対に近いような緊張関係があったことを知らされるのは衝撃的だった。
クイーンに関しては、作品全般に新たなスポットライトを当てた飯城勇三『エラリー・クイーン完全ガイド』12があった。
田口俊樹『日々翻訳ざんげ』3は、ミステリ翻訳の大御所によるすこぶる面白い回顧談風エッセイ。
■2021年極私的ベスト8 (順位なし) +α■
ストラングル・成田(すとらんぐる・なりた) |
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ミステリ読者。北海道在住。 ツイッターアカウントは @stranglenarita 。 |