「今の翻訳ミステリー大賞シンジケートは、過去の名作についての言及が少ない!」ーーそんなことをお思いの方はいらっしゃいませんか?

そういう方向けの連載が今回から月イチで始まります。犯罪小説が大好きでしかたがないという小野家由佳氏が、偏愛する作家・作品について思いの丈をぶつけるコラムです。どうぞご期待ください。(事務局・杉江)

 

 去る1月18、19日に当欄「乱読クライム・ノヴェル」が連載4周年を迎えたのを記念して、過去の回をキャッチコピーで振り返る企画をお届けしました。 その際にtwitter上で実施した、どの作品を読みたくなったか、のアンケートにご協力いただいた皆様、誠にありがとうございます。その結果を集計しましたので、順位をご報告します。

 アンケートは4作ごとのブロックで行いましたので、そのブロックに入った票数×個々の作品が占めたパーセンテージでポイントを出しております。それではご覧ください。ご投票いただいた作品は何位になったでしょうか。昨日に続き、いよいよ上位です。

47位~23位

 

 

17位:14ポイント

その2:カーター・ブラウン『ダムダム』

「来るもの誰も拒まない。へんてこ屋敷で巻き起こる予測不能の珍騒動!」

その15:デヴィッド・グーディス『深夜特捜隊』

「全てを失った時、堕ちた元警官は失うことすらできなかったものに気づかされる」

その18:ロス・H・スペンサー『俺には向かない職業』

「ありえない程お間抜けで、切ないくらいひたむきな私立探偵による一世一代の大騒ぎ!」

その27:エラリイ・クイーン『孤独の島』

「名探偵には扱えない犯罪を、あくまでクイーン流のロジックで紐解く異色の勝負作」

その34:ホレス・マッコイ『明日に別れの接吻を』

「何者にもなれない虚しさが読者の胸を撃ち抜く孤高の作品」

その36:ヒラリー・ウォー『この町の誰かが』

「殺人犯はどこにいる? 加速する疑心暗鬼の末に曝け出される〈普通の町〉の隠し事」

13位:15ポイント

その17:エド・レイシイ「さらばその歩むところに心せよ」

「何一つ手にすることができなかった男の最後の犯罪の顛末は、読者の心を鷲掴みにする」

その30:スティーヴン・ピーターズ『公園はおれのもの』

「今夜この瞬間からセントラル・パークはおれのもの。誰一人逃さない大都会の戦争小説」

その42:ヘンリイ・セシル『法廷外裁判』

「正直な場だから嘘を吐き、嘘を吐ける場だからこそ正直に。逆説と笑いに満ちた場外戦!」

10位:16ポイント

その5:ヘンリイ・スレッサー『快盗ルビイ・マーチンスン』

「僕の従兄は世界一の大悪党……になる男。初めての悪事へ向け、僕らは今日も精を出す」

その11:ロバート・L・フィッシュ『密輸人ケックの華麗な手口』

「一編一編「そうきたか!」と膝を打つ。アイディアに満ちたホラ話六連発」

その26:チャールズ・ウィリアムズ『絶海の訪問者』

「大海原に浮かぶ二隻のヨットの中だけで展開される、予測不能の極限状況サスペンス」

その48:フレデリック・ダール『生きていたおまえ…』

「一つの気づきで全てが反転する、如何ともしがたい人生を送る人々に捧げる犯罪小説」

9位:18ポイント

その47:ヘンリイ・ケイン「一杯のミルク」ほか

「冴えた頭と軽口で全ての危険を乗り越える。陽気で小洒落た私立探偵小説シリーズ」

8位:19ポイント

その1:ウィリアム・P・マッギヴァーン『緊急深夜版』

「正義の味方に成り切れない新聞記者が巨悪を追った先で胸に刻む、自らの仕事の第一義」

7位:20ポイント

その3:ジョー・ゴアズ『マンハンター』

ハードな鬼ごっこの果てに、追う者と追われる者の境界線は衝撃とともに消え失せる

5位:21ポイント

その12:ジャック・フィニイ『夜の冒険者たち』

「たとえば隣の家のブランコ、たとえば深夜の高速道路。すぐそこから始まる冒険小説」

その16:シャーロット・アームストロング「あほうどり」

「善人は時に悪人の何倍もタチが悪い」

4位:23ポイント

その28:ローレンス・ブロック『緑のハートをもつ女』

「ただの犯罪者を書かせたら天下一品の作者による〈詐欺という仕事〉についての小説」

3位:25ポイント

その23:マーガレット・ミラー『これより先怪物領域』

「裁判の進行と共に露わになる事件の恐ろしい真相。人間という怪物のためのサスペンス」

2位:27ポイント

その8:ジョン・ビンガム『第三の皮膚』

「一夜限りの犯罪が夢見る青年の人生を狂わせる。世界一頼りないクライム・ノヴェル」

1位:37ポイント

その4:ドナルド・E・ウェストレイク『警官ギャング』

「強盗をするのに最も相応しい職業は警官だ」

 いかがでしたでしょうか。順位の予想はどのくらい当たりましたか? 読書の参考になれば幸いです。今後も〈乱読クライム・ノヴェル〉にご期待ください。

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小野家由佳(おのいえ ゆか)
ミステリーを読む社会人五年生。本格ミステリとハードボイルドとクライムコメディが特に好きです。Twitterアカウントは@timebombbaby