「今の翻訳ミステリー大賞シンジケートは、過去の名作についての言及が少ない!」ーーそんなことをお思いの方はいらっしゃいませんか?

そういう方向けの連載が今回から月イチで始まります。犯罪小説が大好きでしかたがないという小野家由佳氏が、偏愛する作家・作品について思いの丈をぶつけるコラムです。どうぞご期待ください。(事務局・杉江)

 

 好評連載「乱読クライム・ノヴェル」は前月で48回、4周年を迎えました。それを記念して過去の連載をすべて振り返る、キャッチコピー企画をお送りします。それぞれの作品に付したキャッチコピーから未読の方は作品の内容を想像し、既読の方は、ああ、こんな小説だったよね、と思い出してみてください。また、添付のツイッターアンケートで、4回ごとにどの作品を読んでみたくなったかをお答えいただけるようになっています。ぜひ、ご協力ください。昨日の前編に続き、後編です。

 

その25:エヴァン・ハンター『ハナの差』

「今日も明日もハナの差で幸せを逃し続ける主人公。奮闘奔走大暴走のクライムコメディ」

その26:チャールズ・ウィリアムズ『絶海の訪問者』

「大海原に浮かぶ二隻のヨットの中だけで展開される、予測不能の極限状況サスペンス」

その27:エラリイ・クイーン『孤独の島』

「名探偵には扱えない犯罪を、あくまでクイーン流のロジックで紐解く異色の勝負作」

その28:ローレンス・ブロック『緑のハートをもつ女』

「ただの犯罪者を書かせたら天下一品の作者による〈詐欺という仕事〉についての小説」

その25~その28で読みたくなった犯罪小説は?

その29:ブルーノ・フィッシャー『血まみれの鋏』

「誰よりも身近な存在である彼女のことを何も知らなかったと思い知らされる暗い巡礼の物語」

その30:スティーヴン・ピーターズ『公園はおれのもの』

「今夜この瞬間からセントラル・パークはおれのもの。誰一人逃さない大都会の戦争小説」

その31:ボワロー&ナルスジャック『女魔術師』

「紙上の魔術師コンビが書いた、愛に満ちた世界最高の一大スぺクタル」

その32:ハーバート・ブリーン『真実の問題』

「真実を伝えるか、それとも隠し通すか。青年の上にのしかかる問題は単純故に難問だ」

その29~その32で読みたくなった犯罪小説は?

その33:ウィット・マスタースン『黒い罠』

「個人と社会のどちらが裁くべきか。警察小説の名手が描く新旧の価値観のぶつかりあい」

その34:ホレス・マッコイ『明日に別れの接吻を』

「何者にもなれない虚しさが読者の胸を撃ち抜く孤高の作品」

その35:エドワード・D・ホック『夜はわが友』

「短編ミステリの形式で書けるものをギュっと詰め込んだホック渾身の一人アンソロジー」

その36:ヒラリー・ウォー『この町の誰かが』

「殺人犯はどこにいる? 加速する疑心暗鬼の末に曝け出される〈普通の町〉の隠し事」

その33~36で読みくなった犯罪小説は?

その37:トマス・ウォルシュ『針の孔』

「小さな街の、小さな家の、小さな男の心の中で展開される途方もない逡巡」

その38:ブライアン・ガーフィールド『砂漠のサバイバル・ゲーム』

「全てを奪われ放り出されたのは砂漠の真ん中。理不尽しかないゲームは既に始まっている」

その39:ハル・エルスン『アメリカ版 十代の性典』

「不良少年少女の傍にいたからこそ書けた、作り物らしさがどこにもない青春物語」

その40:ダグラス・フェアベアン『銃撃!』

「たった一発の銃撃で文字通り引き金が引かれたのは、誇りを賭けた本物の戦争ごっこ」

その37~その40で読みたくなった犯罪小説は?

その41:ウィリアム・アイリッシュ『暗闇へのワルツ』

「手に入らないと分かっている幸せを追い求める、名手一流の不安に満ちた恋愛物語」

その42:ヘンリイ・セシル『法廷外裁判』

「正直な場だから嘘を吐き、嘘を吐ける場だからこそ正直に。逆説と笑いに満ちた場外戦!」

その43:パトリック・クェンティン『愚かものの失楽園』

暴かれるのはうしろめたい人間たちの不誠実さ。臓腑を抉られるようなサスペンス

その44:カート・キャノン『酔いどれ探偵街を行く』

「街には今なお彼を頼る人がいる。命以外の全てを失っても酔いどれ探偵はまだ死ねない」

その41~その44で読みたくなった犯罪小説は?

その45:リチャード・ジェサップ『摩天楼の身代金』

「破天荒、しかし精緻な超高層ビル襲撃作戦は今なお読者を驚倒させる。これぞATB」

その46:A・D・G『病める巨犬たちの夜』

「その夜、〈おれたち〉が抱えていたもの全てが噴出する。内容も語り口も異色の暗黒小説」

その47:ヘンリイ・ケイン「一杯のミルク」ほか

「冴えた頭と軽口で全ての危険を乗り越える。陽気で小洒落た私立探偵小説シリーズ」

その48:フレデリック・ダール『生きていたおまえ…』

「一つの気づきで全てが反転する、如何ともしがたい人生を送る人々に捧げる犯罪小説」

その45~その48で読みたくなった犯罪小説は?

 いかがでしたでしょうか。小野家氏のクライム・ノヴェルを巡る旅はまだまだ続きます。今後も〈乱読クライム・ノヴェル〉にご期待ください。アンケートの結果は後日発表いたします。

◆乱読クライム・ノヴェル バックナンバー◆

 

小野家由佳(おのいえ ゆか)
ミステリーを読む社会人五年生。本格ミステリとハードボイルドとクライムコメディが特に好きです。Twitterアカウントは@timebombbaby